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事故物件に一度住めばOKは嘘!告知義務のガイドラインと賢い売却法

「事故物件は、誰かが一度住めば告知義務がなくなる」という噂を聞いたことはありませんか?
もしこれが本当なら、所有者にとっては大きなメリットに思えるかもしれません。

しかし、この噂は嘘であり、信じてしまうと深刻なトラブルに発展する可能性があります。

この記事では、2021年に国土交通省が策定したガイドラインに基づき、事故物件の告知義務に関する正確な情報告知義務違反によるリスクを解説します。

さらに、トラブルを避けて事故物件を手放すための方法も紹介しますので、事故物件の扱いに悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

「事故物件は一度住めば告知義務がなくなる」は嘘

ここでは、事故物件の告知義務について解説します。

「物件ロンダリング」の横行とその実態

「物件ロンダリング」とは、事故物件であることを隠すために短期間だけ人を住まわせ、次の入居者や買主には「前にも入居者がいた」とだけ説明して心理的瑕疵を薄めようとすることです。

しかし、国土交通省のガイドラインでは、このような行為で告知義務が消滅することはないとされています。
物件ロンダリングは、後に発覚した場合、契約解除損害賠償請求につながるリスクの高い行為です。

売買と賃貸で違う?告知義務が続く期間

事故物件の告知義務の期間は、不動産の取引が「売買」「賃貸」どちらかによって大きく異なります。

賃貸契約の場合、人の死に関する事案が発生してからおおむね3年間が告知義務の目安とされています。
ただし、事件性が高く、社会的な影響が大きい場合は3年を過ぎても告知が必要なケースもあります。

一方、売買契約の場合、告知義務に期間の定めはありません
過去の判例では、約50年前に起こった殺人事件を告知せずに売買して、告知義務違反が認められたケースもあります。

告知が必要なケースと不要なケースを解説

国土交通省のガイドラインでは、告知が必要な基準が示されており、告知義務の対象外となるケースも記載されています。

老衰や病死などの自然死や、日常生活の中での不慮の事故(階段からの転落など)、通常使用しない集合住宅の共用部分での死亡は、原則として告知義務の対象外とされています。

一方で、告知が必要となるのは、自殺、他殺、あるいは火災などの事故による死亡があった場合です。
また、病死や老衰といった自然死であっても、発見が遅れて特殊清掃や大規模なリフォームが必要になった場合は、告知義務が発生します

事故物件の告知義務違反によるリスク

売主や貸主は、物件に瑕疵(欠陥)があることを故意に告知しなかった場合、契約不適合責任を問われ、以下のようなリスクを負うことになります。

項目内容
契約解除買主や借主が事故物件であることを知らずに契約してしまった場合、契約を解除される可能性があります。
損害賠償請求損害賠償の範囲は広く、賃料、礼金、保証料、引越料、慰謝料、弁護士費用などが請求されることもあります。
代金減額請求物件が契約の内容に適合しない場合、買主や借主から代金の減額を請求される可能性があります。

事故物件を所有し続けるデメリット

事故物件を売却せずに持ち続けること、様々なデメリットが伴います
問題の先送りは、状況をさらに悪化させる可能性があります。

事故物件の資産価値の下落

事故物件の場合、資産価値は相場の価格よりも下がることが多いです。
また、事件性の高い事案があった物件は、買い手や借り手を見つけることが困難になります
時間が経過しても「心理的瑕疵」が完全に消えることはなく、資産としての価値は低いままとなってしまいます。

固定資産税と維持管理費による経済的負担

物件を所有している限り、固定資産税や都市計画税は毎年課税されます
また、建物の劣化を防ぐための修繕費、マンションであれば管理費や修繕積立金など、維持管理のための費用も継続的に発生します。
収益を生み出さない、あるいは生み出しにくい事故物件を所有し続けることは、経済的負担にもなります

近所の目や管理の手間によるストレス

事故物件を所有していると、近隣住民からの好奇の目や噂話に悩まされるなど、精神的なストレスを感じることが少なくありません
また、遠方に住んでいる場合、物件の定期的な見回りや管理は大きな手間となります。
こうした精神的・物理的な負担によるストレスは、所有者の生活に重くのしかかります

トラブルを避けて事故物件を手放す方法

事故物件を所有し続けるデメリットを考えると、適切な方法で手放すことがも一つの選択肢となります。
事故物件を手放す方法として、主に「買取による売却」「仲介による売却」「相続放棄」の3つが挙げられます。

買取による売却

事故物件を不動産会社に直接売却する方法です。
最大のメリットは、売却までのスピードが速いことです。
一般の買い手を探すわけではないため、売却活動が長期化する心配もなく、最短1ヶ月程度で売却できます

さらに、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を免責する特約を付けてくれる業者が多く、売却後のトラブルを回避できる点も大きな安心材料です。
ただし、後述の不動産仲介による売却と比較すると、買取価格は7〜8割程度になる傾向があります。

不動産仲介による売却

不動産会社に仲介を依頼し、一般の市場で買い手を探す方法です。
最大のメリットは、買取に比べて高い価格で売却できる可能性があることです。
市場価格に近い値段で売れることもあり、少しでも高く売りたい場合に適しています。

しかし、事故物件の場合、買い手が見つかるまでに数ヶ月から1年以上かかることもあるほか、買い手を見つからないケースも珍しくありません。

相続放棄

物件を相続によって取得した場合、選択肢の一つとして相続放棄があります。
これは、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がないという手続きです。
相続放棄することで、事故物件の管理売却の手間固定資産税の負担から解放されるというメリットがあります。

ただし、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。
また、事故物件以外の預貯金などのプラスの財産も全て手放すことになるため、慎重な判断が求められます。

事故物件を手放すならどの方法がおすすめ?

事故物件を手放すにあたり、どの方法にもメリットとデメリットがあります
ご自身の状況や希望に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

方法メリットデメリットこんな人におすすめ
買取業者売却スピードが速い
・仲介手数料が不要
契約不適合責任を免責できることが多い
・手間が少ない
売却価格が相場より安くなる傾向がある・すぐに現金化したい
手間をかけずに手放したい
売却後のトラブルを避けたい
不動産仲介・買取より高く売れる可能性がある売却までに時間がかかる
・仲介手数料がかかる
売却後の責任を問われるリスクがある
・時間に余裕がある
少しでも高く売りたい
相続放棄・物件の管理責任や税負担から解放される・申述の期限が3ヶ月と短い
・他のプラスの財産も全て放棄することになる
・一度手続きすると基本的に撤回できない
相続財産全体がマイナス
・物件の管理や売却に関わりたくない

まとめ

「事故物件は一度住めば告知義務がなくなる」という情報は、誤りです。
特に不動産売買においては、告知義務の期間は定められておらず、この義務を怠ると契約解除損害賠償といった深刻な事態を招きかねません。
国土交通省のガイドラインを正しく理解し、誠実な対応を心がけることが不可欠です。

事故物件を所有し続けることは、資産価値の下落税負担精神的なストレスなど多くのデメリットを伴います。
問題を先延ばしにせず、ご自身の状況に合った最適な方法で手放すことを検討しましょう。
「スピードと安心」を重視するなら不動産会社による買取、「価格」を追求するなら不動産による仲介、相続した物件で負担が大きい場合は相続放棄が有効な選択肢となります。

どの方法で手放すかお悩みの方は、訳あり不動産相談所にぜひご相談ください。

この記事の担当者

担当者③

お客様一人一人に寄り添い、ニーズに合わせた最適な売却プランをご提案いたします。築古空き家や再建築不可物件、事故物件などの難しい物件でも、スピーディーかつ高額での買取を実現できるよう全力でサポートいたします。