
大島てる氏に聞く|事故物件は本当に売れない?取引の実態と購入される理由
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事故物件市場は近年、大きな変化を迎えています。
国土交通省によるガイドラインの策定以降、事故物件の取引環境はどのように変わったのでしょうか。
また、日本の不動産市場に参入する海外投資家は事故物件をどう見ているのでしょうか。
事故物件公示サイト「大島てる」の運営代表である大島てる氏に、事故物件市場の現状と将来、そして事故物件を所有する大家・投資家へのメッセージを伺いました。
目次

事故物件公示サイト「大島てる」の運営代表。
2005年に同サイトを開設し、日本を中心に世界の事故物件情報を公開している。
テレビや新聞、ウェブメディアなどでも事故物件に関する解説も行っている。

インタビュアー:
海外投資家が増えていますが、海外投資家が事故物件を買う動きは増えていくと思いますか?

大島てる氏:
買うと言えば買うと思います。
ただし、「海外の人は事故物件を気にしないから買う」という話ではないと思います。
投資用不動産の場合、実際に住むのは日本人の入居者であることが多いわけです。
仮に投資家本人が気にしなくても、入居者が敬遠して空室が続けば元も子もありません。
また、「事故物件を気にするのは日本人だけだ」と言われることもありますが、決してそうではないと思います。
海外の投資家も、事故物件をかなり気にしている印象があります。
例えば、香港をはじめとするアジア圏では風水を重視する文化があります。
験担ぎや縁起を大切にする考え方は、日本以上に根強い地域もあります。
そのため、「事故物件だから選んで買う」というより、日本の不動産市場に投資する外国人が増えれば、事故物件の取引も増えるということだと思います。

インタビュアー:
投資家全体の数が増えることで、事故物件を購入する人も増えていくということですね。
では、事故物件投資のファンド化や証券化の可能性はあるのでしょうか。

大島てる氏:
結論、事故物件投資のファンド化や証券化は難しいのではないかと思います。
国土交通省のガイドラインが策定された直後に、取材で「いわゆる3年ルールが導入されると事故物件市場はどうなると思いますか」という質問を受けました。
私が当時予想していたのは、事故物件を安く購入し、告知義務の対象外となった後に賃貸運用するスキームが広がるのではないかということでした。
例えば、人が亡くなったことで売却に苦戦している物件があったとします。投資家は事故物件であることを承知のうえで、その物件を比較的安く取得します。
ただし、投資家が3年間保有する必要があるわけではありません。
重要なのは購入後の経過年数ではなく、事件や事故が発生してからの経過年数です。
そのため、すでに事故から3年以上経過している物件であれば、賃貸物件として貸し出す際に告知義務の対象外となるケースがあります。
そうなると、事故物件を安く取得し、告知義務のない賃貸物件として運用するという投資スキームが広がるのではないかと考えました。
多くの投資家が同じ発想を持てば、事故物件を取得したい人が増えます。
その結果、需要と供給の関係で、事故物件を安く買い叩くことが難しくなるはずです。
私は5年ほど前にそのような予想をしていましたが、実際に現在の市場はその方向に進んでいるように感じています。
事故物件市場の流動性が高まり、取引が活発になるという意味では、国としても想定していた流れだったのではないでしょうか。
今後ファンドや証券化といった形態が登場する可能性は否定できませんが、事故物件を買い叩くということ自体は難しくなっているわけですから、現実的には簡単ではないと思います。

インタビュアー:
事故物件を所有している方へ伝えたいメッセージはありますか?

大島てる氏:
大家さんは、ある意味では被害者です。
いわば「もらい事故」のような形で損失を受けることも少なくありません。
だからといって、大家さんが事実を隠してよい理由にはならないと思います。
私は、事故物件について正直に伝える義務は、法的にも倫理的にもあると考えています。
実は、正直に説明することで「信頼できる大家さんだ」「信頼できる不動産会社だ」と評価されることもあります。
むしろ、事故の事実そのものよりも、「後から嘘が分かった」ということの方が大きな損失になると思っています。
買主や借主の信頼を勝ち取ることが、長い目で見ると得なのではないでしょうか。

大島てる氏:
投資家や大家業を始める方は、物件を購入する際にさまざまなリスクを調査します。
床が傾いていないか、雨漏りやシロアリ被害はないかなど、多くの確認項目があり、その中の一つとして、「過去に人が亡くなっていないか」を調べることになります。
そうした調査の場面では、「大島てる」もお役に立てているのではないかと思います。
投資家や大家の方には、購入判断を行う上で必要な情報を確認するための手段の一つとして利用していただければと思います。

※事故物件公示サイト「大島てる」の掲載画面。地図上には事故物件を示す炎のアイコンが多数表示されている。掲載対象は日本全国だけでなく、海外の事故物件情報にも及ぶ。
事故物件市場は、ガイドライン策定や投資家層の広がりによって大きく変化しつつあります。
かつてのように「事故物件だから大幅に安く買える」という時代ではなくなりつつある一方で、取引の透明性はこれまで以上に重要になっています。
今回のインタビューでは、事故物件を巡る市場の変化だけでなく、オーナーや不動産会社が正確な情報開示を行うことの重要性についても語られました。
事故物件をどう評価するかは人それぞれですが、納得できる取引のためには、売る側・買う側の双方が正しい情報に向き合うことが欠かせないと言えそうです。
本インタビューは全3回でお届けしました。
第1回では「購入されやすい事故物件の特徴」、第2回では「大島てるの掲載基準と削除依頼の実態」、そして第3回となる今回は、「事故物件市場の変化」について伺いました。
この記事の監修者

藤井亮 宅地建物取引士