
借地の立ち退きを迫るには?立退料の相場や正当事由、交渉ポイントについて徹底解説
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土地の評価や相続、売却を考える際に必ず登場するのが「借地権割合」という言葉。
借地権割合は、土地の権利関係を数字で示した重要な指標です。
この割合を正しく理解することで、相続税の計算を有利に進めたり、借地権付きの不動産を適正な価格で売買したりすることが可能になります。
この記事では、借地権割合の基本的な意味から、具体的な調べ方、計算方法、そして売却や相続といった場面でどのように活用されるのかまで、詳しく解説します。
まず、借地権割合の基本について理解を深めましょう。
借地権割合とは、土地の価値を地主と借地人でどのように分け合うかを示す、いわば「権利の配分図」です。
借地権とは、建物を所有する目的で、地主から土地を借りる権利のことです。
土地の所有権は地主にありますが、借地人は契約に基づいてその土地を使用する権利を持ちます。
この権利自体に財産的な価値があり、売買や相続の対象となります。
借地権は、借地人の居住や事業の安定を守るために法律で強く保護されています。
借地権については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
借地権割合とは、その土地全体の価値(自用地評価額)のうち、借地権の価値が占める割合を指します。
この割合は国税庁によって地域ごとに定められており、主に相続税や贈与税の財産評価額を算出する際に用いられます。
例えば、借地権割合が70%の地域では、土地の価値の70%が借地人の権利、残りの30%が地主の権利(底地権)と見なされます。
借地権割合が存在する主な理由は、課税の公平性を保つためです。
土地の所有権を持つ地主と、その土地を利用する権利を持つ借地人とでは、土地から得られる経済的利益が異なります。
この権利の価値を客観的な指標で評価し、それぞれの立場に応じた適正な税金を計算するために、借地権割合が設定されています。
これにより、地主と借地人の間の権利関係が明確になり、不動産取引の円滑な進行につながっています。
借地権割合は全国一律ではなく、場所によって大きく異なります。
ここでは、その目安や調べ方、割合の高低がもたらす影響について解説します。
借地権割合は、土地の利用価値の高さに比例して設定されるのが一般的です。
商業地や都心部など、土地の需要が高く地価も高騰しているエリアでは借地権割合が高くなる傾向にあります。
一方で、郊外や地方では割合が低く設定されています。
以下は、地域ごとの借地権割合の目安です。
地域 | 借地権割合(目安) | 備考 |
---|---|---|
東京都中央区銀座 | 90%(A) | 日本有数の商業地 |
東京都文京区(住宅地) | 70%(C) | 都心の人気住宅地 |
大阪府大阪市中央区 | 80%(B) | 関西を代表する商業地 |
京都府京都市(住宅地) | 60%(D) | 歴史ある観光都市 |
地方の郊外・農村部 | 30%~50%(G~E) | 土地の利用価値が比較的低い |
※()内のアルファベットは路線価図で用いられる記号です。
借地権割合の高さは、借地権者と地主の双方に影響を与えます。
このように、借地権割合は財産評価や税額に直結する重要な要素です。
借地権割合を調べるために不可欠なのが、国税庁が公表している「路線価図」です。
路線価図には、道路に面する土地の1平方メートルあたりの評価額(路線価)が記載されています。
路線価は「300D」のように「数字+アルファベット」で表記されています。
この数字は1平方メートルあたりの価額(千円単位)、アルファベットが借地権割合を示しています。
記号 | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
例えば「300D」と記載されていれば、その道路に面した土地の路線価は30万円/㎡で、借地権割合は60%であることを意味します。
借地権割合を正確に把握し、それを用いて借地権の価値を計算する方法を具体的に見ていきましょう。
借地権割合は、国税庁のウェブサイトで誰でも簡単に調べることができます。
路線価が設定されていない地域では、「評価倍率表」を用いて固定資産税評価額から計算します。
「借地権価格」という言葉には、2つの意味合いがあります。
ひとつは、相続税や贈与税を計算するための税務上の評価額。
もうひとつは、実際に売買されるときの実勢価格です。
ここでは、税金の計算などに使われる借地権の評価額(相続税評価額)の求め方を解説します。
この評価額は、次の計算式で求めるのが基本です。
借地権価格 = 自用地評価額 × 借地権割合
自用地評価額とは、その土地を所有者自身が自由に使用できる状態、いわゆる更地として評価した場合の金額です。
自用地評価額は、基本的に「路線価 × 地積」で算出されますが、実際には土地の形状や条件に応じて、奥行補正率、不整形地補正率、間口狭小補正率などの補正が加わることがあります。
これにより、標準的でない土地についても、より妥当な金額が評価されます。
たとえば、以下のようなケースを想定してみましょう。
補正がない標準的な土地であれば、借地権価格は次のように求められます。
なお、一部地域では、路線価図に借地権割合が表示されていない場合があります。
その場合は、近隣地域の借地権割合を参考に推定したり、不動産鑑定士による個別評価を行ったりするのが一般的です。
また、ここで示した借地権価格は、あくまで税務上の評価額であり、実際の売却価格とは異なる場合があります。
実勢価格は、立地条件や地主の承諾内容、再建築の可否など、さまざまな要因をもとに個別に決定されます。
ただし、おおまかな相場感を把握するための一つの目安にはなるでしょう。
底地(そこち)とは、土地を貸している側(地主)が所有している土地のことです。
借地権が設定されているため、土地の一部の権利(使用収益権)は借地人が持っており、地主は完全な所有権を有しているわけではありません。
このような土地の価格(底地価格)は、その土地が本来持つ価値(自用地評価額)から、借地人の持つ借地権の価値を差し引いて求めます。
計算式は以下の通りです。
底地価格 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合)
先ほどの例(自用地評価額6,000万円、借地権割合60%)で計算すると、
底地価格 = 6,000万円 ×(1 − 60%)= 6,000万円 × 40% = 2,400万円
このように、借地権と底地権は、それぞれが土地の価値の一部を持っており、両者を合わせると土地全体の評価額(自用地評価額)になるという関係性にあります。
相続や売却、底地の買取交渉などにおいて、この分け方が基準となります。
土地の上に賃貸アパートなどの貸家が建っている場合、その土地は「貸家建付地(かしやたてつけち)」と呼ばれます。
この場合、更地としての評価(自用地評価)とは異なり、土地の使用に制限があるため評価額が下がります。
貸家建付地の評価は、以下の式で求められます。
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
ここで使われる借家権割合は、全国一律で30%と定められています。
また、賃貸割合は貸家のうち実際に賃貸されている部分の割合で、たとえば全室貸し出されているアパートなら100%(=1)となります。
このような評価方法により、土地の相続税評価額を実態に即して減額することができるため、貸家建付地は一定の節税効果を持つとされています。
ただし、評価の対象となる建物が実際に賃貸されていることが前提です。
借地権割合は、単なる評価指標にとどまらず、実際の不動産取引や税務手続きなど、さまざまな場面に影響します。
ここでは、借地権割合が具体的に関係してくる代表的なケースを3つ紹介します。
借地権付きの建物を売却する際の実勢価格は、借地契約の条件や地域の需給バランスなど、さまざまな個別事情に大きく左右されます。
具体的には、需要と供給のバランス、契約期間、更新料、建て替えの可否、地主の承諾の有無などが価格に影響します。
とはいえ、借地権割合は価格交渉の際によく参考にされる指標であり、相場の出発点として有用です。
正確な価格を把握するには、不動産会社や不動産鑑定士による個別査定が不可欠ですが、一般的には借地権割合が高いほど、権利の価値も高く見積もられやすい傾向があります。
借地権割合が特に大きく影響するのが、相続税や贈与税の評価です。
借地権は相続財産として扱われるため、その評価額を計算する際に借地権割合が重要な指標となります。
評価額が適正でないと、税額に大きな影響を及ぼすため、実際の契約内容や土地条件を踏まえて、税理士などの専門家に相談しながら正確に申告することが大切です。
借地権割合は、地主との交渉において、地代や契約更新料、建替え承諾料などを算定する際の目安として用いられることがあります。
法律で明確な計算式が定められているわけではありませんが、「土地全体のうち、借地権者が占める価値の割合」として、客観的な基準の一つとして提示されることが多いです。
交渉においては、あくまで当事者間の合意が前提となりますが、借地権割合をもとに双方が妥当な水準を探ることで、話し合いがスムーズに進む可能性もあります。
借地権割合は、土地の価値を地主と借地人の間で分配するための重要な指標です。
この割合は、相続税や贈与税の計算はもちろん、借地権の売却価格や地代交渉など、様々な場面で影響を及ぼします。
路線価図を見れば誰でも割合を確認できますが、その評価額の計算や、実際の売買・相続手続きは非常に複雑です。
特に、土地の形状が特殊な場合や、地主との関係に課題がある場合は、個人での対応は困難を極めます。
借地権に関するお悩みや不安がある場合は、安易に判断せず、税理士や不動産鑑定士、借地権に詳しい不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。
なお、訳あり不動産相談所は、借地権付きの建物含む「訳あり不動産」に特化した買取業者です。
借地権付きの建物の売却を検討している際は、ぜひ気軽にご相談ください。
専門家の知見を活かし、丁寧にサポートいたします。
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担当者③