
不動産の相続放棄とは?手続き方法と注意点を徹底解説
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「田舎にある実家を相続したけれど、住む予定もなく管理も大変」
このようなお悩みはありませんか?
価値が見込めず、管理コストや税金ばかりがかかる不動産は、相続人にとって大きな負担となります。その解決策の一つが相続放棄です。
しかし、相続放棄は「知らなかった」では済まされない厳格なルールや注意点があります。
特に2023年の民法改正により、相続放棄後の責任についても変更がありました。
この記事では、田舎の家や土地の相続放棄について、基礎知識から手続きの流れ、費用、そして2023年の民法改正による注意点まで解説します。
相続放棄以外の選択肢もあわせて紹介しますので、ご自身の状況に最適な解決策を見つける一助となれば幸いです。
目次
相続放棄を検討する前に、まずは基本的な知識を整理しましょう。
なぜ田舎の家が「負動産」と呼ばれるのか、そして相続放棄とは具体的にどのような手続きなのかを理解することが、適切な判断への第一歩です。
田舎の家や土地が「負動産」となりやすい背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
まず、人口減少と高齢化により、地方の不動産需要は減少傾向にあります。
買い手が見つからず、資産価値が購入時よりも大幅に下落、場合によってはゼロになることも珍しくありません。
さらに、不動産は所有しているだけで固定資産税や都市計画税がかかります。
加えて、建物の修繕費、庭の手入れ、火災保険料など、維持管理コストも継続的に発生します。
これらの負担が、活用予定のない相続人にとって重い足かせとなるのです。
特に、遠方に住んでいる場合は管理がさらに困難になり、空き家として放置され、倒壊や景観悪化といった近隣トラブルの原因になるリスクも抱えています。
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の預貯金をはじめとしたプラスの財産も、借金やローンといったマイナスの財産も、その一切を相続する権利を放棄する法的な手続きです。
この手続きは、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出し、受理されることによって効力が生じます。
重要なのは、相続放棄は「この土地だけ放棄する」といった特定の財産のみを選ぶことができない点です。
すべての財産を放棄するか、すべてを相続するかの選択となります。
したがって、被相続人に多額の借金がある場合や、管理不能な不動産の負担から逃れたい場合に有効な手段ですが、価値のある財産も手放すことになるため、慎重な判断が求められます。
相続放棄をすべきかどうかの判断は、まず正確な財産調査から始まります。
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産をすべてリストアップし、全体像を把握することが不可欠です。
預貯金は残高証明書、不動産は固定資産税の納税通知書や名寄帳、借金は信用情報機関への開示請求などで確認します。
その上で、「マイナスの財産がプラスの財産を明らかに上回っている」「不動産の管理コストや手間が、その資産価値に見合わない」といった状況であれば、相続放棄を検討すべきでしょう。
判断に迷う場合は、専門家へ相談することをおすすめします。
相続放棄のメリットとデメリットを天秤にかけ、ご自身の状況にとって最善の選択を見極めましょう。
相続放棄の最大のメリットは、不動産に関する責任と負担から解放されることです。
相続放棄が受理されれば、固定資産税の納税義務はもちろん、建物の修繕や草刈りといった維持管理義務からも解放されます。
また、被相続人に借金などの負債があった場合、その返済義務を負う必要もなくなります。
将来的な資産価値の下落リスクや、空き家を原因とする近隣トラブルに巻き込まれる心配もなくなるため、経済的な負担だけでなく、精神的なストレスからも解放されるのは大きな利点と言えるでしょう。
相続放棄の注意すべきデメリットは、価値のある財産もすべて手放さなければならないことです。
例えば、田舎の家は不要でも、都心のマンションや多額の預貯金、有価証券などがあった場合、それらも一切相続できなくなります。
もう一つの重要なデメリットは、相続権が次順位の相続人に移ることです。
例えば、子が全員相続放棄をすると、次は被相続人の親、彼らも亡くなっているか放棄すれば、被相続人の兄弟姉妹へと相続権が移っていきます。
この事実を次の相続人に伝えないと、突然の負債や管理義務の通知が届き、親族間トラブルに発展する可能性があるため、十分な配慮が必要です。
相続放棄には厳格な期限が設けられています。
原則として、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。
この3ヶ月の期間を熟慮期間と呼びます。
「知った時」とは、通常、被相続人が亡くなったこと、そしてそれによって自分が相続人になったことの両方を知った時を指します。
この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は認められず、すべての財産を相続する「単純承認」をしたとみなされます。
ただし、財産調査に時間がかかるなど正当な理由がある場合は、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間の延長が認められることもあります。
2023年4月の法改正により、相続放棄後の財産の管理責任に関するルールが変更されました。
改正前の民法では、相続放棄をしても「次に相続人となる者が管理を始めるまで」は管理義務が残るとされ、その対象者や期間が曖昧でした。
しかし、改正後は「管理義務」が「保存義務」という表現に変わり、その義務を負う者が「相続放棄の時にその財産を現に占有している者」に限定されました。
「現に占有している」とは、被相続人と同居していた、あるいは不動産の鍵を保有して定期的に訪問して管理していたなど、事実上その財産を支配している状態を指します。
例えば、遠方に住んでいて長年実家を訪れていないような場合は、占有しているとはみなされず、保存義務は発生しません。
この改正により、相続放棄者の責任範囲がより明確になったと言えます。
保存義務を負う者がその義務を怠り、例えば建物の倒壊で他人に損害を与えた場合、損害賠償責任を問われる可能性があるため、相続放棄後も注意が必要です。
相続放棄を決断したら、定められた期間内に正確な手続きを進める必要があります。
ここでは、具体的な手続きの流れと必要になる費用について解説します。
相続放棄は、以下のステップで進めるのが一般的です。
相続放棄の申述には、主に以下の書類が必要です。
誰が放棄するか(被相続人との関係)によって必要書類が異なるため、事前に裁判所のサイトや管轄の家庭裁判所に確認しましょう。
| 書類名 | 主な入手先 |
|---|---|
| 相続放棄申述書 | 裁判所のウェブサイト |
| 被相続人の住民票除票または戸籍附票 | 被相続人の最後の住所地の市区町村役場 |
| 申述人(放棄する人)の戸籍謄本 | 申述人の本籍地の市区町村役場 |
| 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 |
| 収入印紙(申述人1人につき800円) | 郵便局、法務局、コンビニ |
| 連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なる) | 郵便局 |
相続放棄にかかる費用は、自分で行うか専門家に依頼するかで大きく異なります。
自分で手続きする場合の費用は、実費のみです。
内訳は、収入印紙代、連絡用の郵便切手代、戸籍謄本などの取得費用となり、総額で1万円以内に収まることがほとんどです。
専門家に依頼する場合は、上記の実費に加えて報酬が発生します。
司法書士に依頼した場合の相場は3万円〜8万円程度、弁護士に依頼した場合は5万円〜15万円程度が目安となります。
事案の複雑さや相続人の数によって費用は変動します。
相続人の状況によって、相続放棄を進める上での注意点や配慮すべき事項が異なります。
ここでは代表的なケースについて解説します。
独身で兄弟もいない方が親の財産を相続放棄する場合、相続権は次順位の相続人に移ります。
法定相続人の順位は、死亡した人から見て第1順位が子、第2順位が親、第3順位が兄弟姉妹と定められています。
そのため、あなたが相続放棄をすると、まずは祖父母に相続権が移ります。
もし祖父母も既に亡くなっている場合は、叔父や叔母(被相続人の兄弟姉妹)が相続人となります。
彼らが予期せぬ形で実家の管理責任や負債を負うことにならないよう、事前に相続放棄する旨を連絡し、状況を説明しておくことが、後の親族トラブルを避けるために重要です。
兄弟全員で話し合い、全員が相続放棄をするという結論に至るケースもあるでしょう。
この場合も、相続権は次順位の相続人(祖父母や叔父叔母など)に移ります。
兄弟間で足並みを揃え、誰が代表して次順位の相続人に連絡するかなどを事前に決めておくとスムーズです。
もし第3順位までの相続人全員が相続放棄をした場合、相続人はいなくなります。
この場合、利害関係者(債権者など)や検察官の申し立てにより「相続財産清算人」が選任され、不動産は最終的に国庫に帰属することになります。
相続権が移る先が、普段ほとんど交流のない疎遠な親族である場合、連絡を取ること自体が難しいケースがあります。
しかし、連絡を怠ると、役所や債権者から通知を受け取った相手を混乱させ、トラブルの原因となりかねません。
まずは手紙を送るなど、丁寧な方法でコンタクトを試みましょう。
手紙には、被相続人が亡くなったこと、ご自身が相続放棄をすること、それにより相続権が相手方に移ったことを簡潔に記載します。
感情的な対立を避けるためにも、客観的な事実を伝えることに徹するのが賢明です。
どうしても連絡が取れない、または話し合いがこじれそうな場合は、弁護士などの専門家に間に入ってもらうことも有効な手段です。
相続財産の中に預貯金などプラスの財産も含まれている場合、相続放棄をためらうこともあるでしょう。
そのような場合は、相続放棄以外の方法で不要な不動産を手放す道を探ることも重要です。
以下の表に、土地を手放す主な方法をまとめました。
| 選択肢 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 全ての相続財産を放棄する | 管理責任や負債から解放される | プラスの財産も手放すことになり、次順位に権利が移る |
| 売却 | 不動産を第三者に売る | 現金化できる可能性がある | 買い手が見つからないリスクがある |
| 寄付 | 自治体などに無償で譲渡する | 社会貢献につながる可能性がある | 受け入れ先がほとんどないのが実情 |
| 国庫帰属制度 | 国に土地を引き取ってもらう | 不要な土地だけを手放せる | 要件が厳しく、費用(負担金)がかかる |
もし不動産にわずかでも買い手が付く可能性があるなら、売却を検討しましょう。
特に、相続した空き家を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。
この特例を使えれば、売却によって得た利益にかかる税金を大幅に抑えることが可能です。
ただし、特例の適用には「耐震基準を満たすこと」「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」などの細かい条件があるため、不動産会社や税理士に相談しながら進めるのが確実です。
詳しくは国税庁のページもご確認ください。
売却が難しい場合でも、地方自治体やNPO法人などに寄付するという選択肢があります。
ただし、自治体等が寄付を受け入れるのは、公園や公道として活用できるなど、公共の利益にかなう土地に限られることが多く、ハードルは高いのが現状です。
また、各自治体が運営する「空き家バンク」に登録し、移住希望者などに情報を公開する方法もあります。
これは空き家の売買や賃貸のマッチングを目的とした制度で、思わぬ買い手や借り手が見つかる可能性があります。
まずは、不動産が所在する市区町村の役場に問い合わせてみましょう。
2023年4月27日から、相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。
この制度は、相続放棄と異なり、不要な土地だけを手放し、他の預貯金などの財産は相続できるという大きなメリットがあります。
ただし、利用するには厳しい要件があります。
建物がある土地、担保権が設定されている土地、境界が不明確な土地などは対象外です。
また、申請時には審査手数料として土地一筆当たり14,000円がかかり、承認された後には10年分の管理費相当額として負担金(宅地は原則20万円)を納付する必要があります。
要件を満たすか、まずは法務局で事前相談してみるのがよいでしょう。
相続放棄はご自身で手続きすることも可能ですが、法的な知識が必要な場面も多く、些細なミスが大きなリスクにつながることもあります。
不安な場合は専門家への相談を強くおすすめします。
自分で手続きを行う場合、費用を抑えられるメリットはありますが、以下のようなリスクが伴います。
これらのリスクを回避し、確実かつスムーズに手続きを進めるために、専門家のサポートも視野に入れましょう。
相続放棄に関して相談できる専門家は主に弁護士と司法書士です。
行政書士は相続放棄申述書の作成ができないため、注意が必要です。
| 専門家 | 主な役割・得意分野 |
|---|---|
| 弁護士 | ・相続放棄手続きの代理(裁判所とのやり取りも含む) ・債権者との交渉 ・他の相続人とのトラブル対応 ・熟慮期間を過ぎた場合の申述など、複雑な案件への対応 |
| 司法書士 | ・相続放棄申述書の作成 ・必要書類の収集サポート ・不動産の相続登記手続き(相続する場合) |
書類作成を中心にサポートしてほしい場合は司法書士、他の相続人との間でトラブルがある、またはその可能性がある場合や、手続き全般を任せたい場合は弁護士に相談するのが一般的です。
前述の通り、専門家への報酬相場は司法書士で3万円〜8万円、弁護士で5万円〜15万円程度です。
多くの法律事務所や司法書士事務所では、初回の無料相談を実施しています。
まずは無料相談を活用し、ご自身の状況を説明した上で、手続きの見通しや費用の見積もりを確認しましょう。
複数の専門家に相談して、対応の丁寧さや相性を比較検討するのも良い方法です。
無料相談だけで解決の糸口が見つかることもあるため、積極的に利用することをおすすめします。
良い専門家を選ぶためには、以下のポイントをチェックしましょう。
ここでは、田舎の家や土地の相続放棄に関するよくある質問にお答えします。
家だけ相続放棄することは不可能です。
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産もすべてを放棄する制度です。
特定の財産だけを選んで放棄することはできません。
もし不要な不動産だけを手放したいのであれば、一度相続した上で、売却や相続土地国庫帰属制度の利用を検討する必要があります。
法定相続人全員が相続放棄をすると、相続人がいない状態になります。
この場合、利害関係者(債権者や特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)が家庭裁判所に申し立てることで「相続財産清算人」が選任されます。
相続財産清算人は、弁護士などの専門家が選ばれることが多く、債権者への弁済などを行なった後に、残余財産を国庫に引き継いで清算します。
相続放棄をするかどうかは、各相続人が個別に判断する権利があります。
そのため、他の人の同意は必要ありません。
しかし、親族間で意見が対立すると、感情的なしこりを残す可能性があります。
なぜあなたが相続放棄をしたいのか、管理の負担や経済的な理由などを丁寧に説明し、理解を求める姿勢が大切です。
それでも話し合いが難しい場合は、弁護士に間に入ってもらうことも検討しましょう。
田舎の家や土地の相続は、多くの人にとって大きな悩みとなり得ます。
相続放棄は、その負担から解放される手段の一つですが、相続を知った日から3ヶ月しか申し立てできないことや、他のプラス財産もすべて手放すといった点に注意しましょう。
また、2023年の民法改正により、「現に占有」している場合の保存義務についても理解しておく必要があります。
相続放棄以外にも、売却や相続土地国庫帰属制度など、様々な選択肢が存在します。
どの方法が最適かは、財産の状況やご自身の意向によって異なります。
一人で抱え込まず、まずは専門家の無料相談などを活用し、客観的なアドバイスを受けることが、後悔のない選択への第一歩です。
この記事が、あなたの問題解決の一助となれば幸いです。
訳あり不動産相談所では、地方の物件も積極的に取り扱っていますので、お困りの方はぜひご相談ください。
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