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不動産の相続放棄とは?手続き方法と注意点を徹底解説

「不動産の相続をすべきか悩んでいる」、「借金や空き家の管理など、負担ばかりが気になる…」という方は少なくありません。
そんなときに検討したいのが「相続放棄」です。
相続放棄を行うと、相続人としての権利や義務が一切なくなり、このようなことで悩む必要がなくなります。
ただし、相続放棄には注意すべき手続きや期限があります。
本記事では、不動産の相続放棄を中心に、手続きの方法やメリット・デメリットなどを徹底解説していきます。
まずは、ご自身の状況に合った最適な選択肢を見極めるための基礎知識から確認していきましょう。

相続放棄の基礎知識

相続放棄とは、どんな手続きでしょうか。
「放棄」というキーワードから相続しない、相続を辞めるというイメージを感じるものの、具体的な手続きを知っている方は少ないかもしれません。
ここでは、相続放棄の基礎知識について分かりやすく解説します。

そもそも相続放棄とは何か

相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった方)の遺産を一切相続しないことを家庭裁判所に申立てる手続きで、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。
この相続放棄が認められると、法律上の相続人としての地位・権利・義務を全て喪失します。
その結果、遺産は他の相続人のものになる一方、借金や住宅ローンといった負債も引き継ぐ必要がなくなります
一方、被相続人の財産や負債の状況がよくわからない場合には、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務を負担する「限定承認」という手続きもあります
限定承認も相続放棄と同様、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申立てる必要があります。
ただし、限定承認は相続人全員が同時に同意しなくてはならないためハードルが高く、司法統計によると、令和5年度の相続放棄の受理件数約28万件に対し、限定承認は688件と実例が非常に少ない手続きです。
なお、被相続人の預貯金や不動産などの権利と借金等の負債をすべて受け継ぐ場合は「単純承認」と呼ばれ、家庭裁判所への申立ては不要です

なぜ相続放棄をするのか

遺産相続と聞くと「思いがけないお金が手に入る」「親から当然もらうもの」など、得するイメージもありますが、実際には相続放棄を行う方も存在します。
相続放棄を行う主な理由は以下の5つが代表的なものです。

  • 被相続人(亡くなった方)に借金(負債)が多い
  • 被相続人(亡くなった方)と疎遠だったため、負債も含めて財産がどれだけあるか分からない
  • 遺産は他の相続人に相続して欲しい
  • 他の相続人と仲が悪く、関わりたくない
  • 使わない実家の不動産を相続しても空き家になり、管理が大変

借金が多いと相続しても結局マイナスになってしまうため、事業承継をするなど特別な理由がなければ相続放棄をすることが多いでしょう。
また、被相続人(亡くなった方)・相続人と疎遠、関わりたくないという理由で相続放棄する方もいらっしゃいます。
近年では空き家問題がフォーカスされていますが、誰も住まなくなった実家を相続してしまうと空き家になり、管理責任や固定資産税などの重い負担が相続人にのしかかります
そのため、遠方の誰も住まない実家、セットバックが必要で建築が難しい宅地、土地の形状が不整形で売りにくい土地など、管理が難しく空き家になる可能性の高い不動産を受け取らないように相続放棄するというケースも考えられます。
もしも、相続放棄をせずにそういった不動産を相続して後悔している方がいれば、後述の「不動産を相続したらどうするか」で紹介する解決策を検討してはいかがでしょうか?

相続放棄のメリット・デメリット

相続放棄にはメリット・デメリットがあります。
代表的なメリットは次の3つです。

  • 負債を相続しなくても良い
  • 相続トラブルを回避できる
  • 管理義務から解放される

一方、デメリットも次のように存在します。

  • あとから資産が見つかっても放棄を撤回できない
  • 一部だけ相続するという選択はできない
  • 他の相続人に負担がかかる
  • 相続放棄後も一定の管理義務が残る場合がある

ここでは、相続放棄のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

相続放棄のメリット

相続放棄のメリットは、相続に関する義務からの解放です。

負債を相続しなくても良い

相続放棄の一番のメリットは負債を相続しなくても良くなることです。
相続放棄をせずに放っておくと単純承認したとみなされ、被相続人(亡くなった方)にローンなどの借入れ(負債)があれば、相続人が返済する義務を負います
しかし相続放棄すればそういった負債を一切相続しなくて良いため、借金の督促などから抜け出すことができます。

相続トラブルを回避できる

疎遠になっていた他の相続人や兄弟姉妹と遺産の分け方というデリケートな話をすると、少しの行き違いで相続トラブルになるかもしれません
しかし、相続放棄すると相続人ではなかったことになるため、こういった相続トラブルから離れることができます。

管理義務から解放される

相続した空き家の塀が崩れて通行人がケガをした、雑草や樹木が伸び放題で隣地に迷惑がかかっている、こういったケースでは現地に住んでいなくても所有者(相続人)の管理責任が問われることになり、場合によっては損害賠償請求される危険もあります
しかし、相続放棄すれば、このような管理義務からも解放されます。
ただし、相続放棄した時点で相続不動産に住んでいた場合など一定の条件で管理義務が残る場合があるため注意しましょう。
詳しくはデメリットの項目で解説しています。

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリットは、次のとおりです。

あとから資産が見つかっても放棄を撤回できない

相続放棄後に多額の現金、高価な宝石や知らない不動産などの遺産が見つかったとしても、相続放棄の撤回はできないため、相続することはできません。
民法では次のように規定されております。

第九百十九条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。

引用:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)

相続財産が出てきて後悔しないよう、相続放棄の決断は慎重に行いましょう。

一部だけ相続するという選択はできない

相続放棄は相続人の地位・権利・義務を全て放棄する手続きのため、一部の財産だけ相続することはできません
どうしても欲しい不動産や財産があれば、生前に贈与を受けておくなどの対策が必要です。
また、プラス財産の範囲でのみ相続する「限定承認」という手続きもあるため、財産状況が分からない、プラスであれば相続したいというケースでは検討してみましょう。

他の相続人に負担がかかる

相続放棄すると相続人の地位を失うため、他の相続人の相続分が増えたり、相続権が次順位(子が全員相続放棄すると親、親が相続放棄すると兄弟姉妹)に移ります。
特に負債が想定していなかった負担になる恐れもあり、後々のトラブルを防ぐためには、自分が相続放棄することを他の相続人や後順位の相続人に伝えておいた方が良いでしょう

相続放棄後も一定の管理義務が残る場合がある

相続放棄後も、放棄時点で占有(住んでいた場合など)している建物などの財産については、他の相続人や相続財産清算人(相続人がいない、または相続人が全員放棄した場合に選任される弁護士)に引き渡すまでは、自己所有財産と同レベルで管理する義務が残ります。
この、相続放棄した後の管理責任については2023年の民法改正で明確になりました。

第九百四十条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)

相続人に空き家を含めた土地建物の管理義務が発生するのは、下記の3つの要件を満たした場合です。

  • 対象不動産が相続財産である
  • 相続人である
  • 相続放棄時点で占有していた(住んでいた)

そのため、相続放棄後に実家から他の場所に引っ越したとしても、他の相続人か相続財産清算人に引き渡すまでは管理義務は残ります
このような状況になった場合は、早めに他の相続人・相続財産清算人に引き渡しましょう

不動産を相続したらどうするのか

では、相続放棄をせず、不動産を相続した場合にはどうすれば良いでしょうか?
一般的には次の3つの選択肢があります。

  • 自分で住む
  • 賃貸運用する
  • 買取業者に売却する

ここでは不動産を相続した場合の選択肢について、それぞれ詳しく解説します。

自分で住む

現在既にそこに住んでいる、または数年以内に戻ってくる場合には自分で住むことがスタンダードな選択です。
住み慣れた地域で今まで通り、または昔のように生活するのも良いでしょう。

賃貸運用する

空き家になっても手放したくない場合は、賃貸運用する方法があります。
古い建物でもリフォームを行い、こまめに清掃などの管理をすれば賃料収入が期待できます。
ただし、空き家は一戸建てのため共同住宅などと違い、手間をかけてメンテナンスしても1軒分の賃料しか入りません。
さらに、遠方で住んでいる場合には清掃管理などは管理会社へ委託する必要があり、リフォーム費用・固定資産税も考えると運用益を得られるまでには長い時間が必要です
今後住む予定が無いのであれば、賃貸運用よりは次の「買取業者に売却する」という選択肢も検討することをおすすめします。

買取業者に売却する

相続した不動産を最も早く、確実に現金化する方法として、不動産買取業者への売却があります。
買取業者なら最短数日、長くても1ヶ月程度で売却が完了し、すぐに現金化できるという大きなメリットがあります。
不動産会社に仲介を依頼する場合、買主のローン審査や確定測量、建物の取り壊しなどが必要となり、現金化まで半年以上かかることが多いです。
また、仲介では買主探しに時間がかかるだけでなく、ローン審査が通らなければ再度ゼロから買主を探さなければなりませんが、買取業者なら金額さえ納得できれば確実に売却できるため、手間なくスムーズに処分できます
買取価格は仲介での売却価格の7割程度になることが多いものの、「早く売りたい」「手続きを簡単に済ませたい」という方にとっては、非常に合理的な選択肢です。
相続した不動産が空き家となる場合、管理コストやトラブルになった場合のリスクなどは相続人にとって大きな負担となります。
時間をかけず、手間なく確実に売却したい方は、不動産買取業者の活用をぜひご検討ください

不動産を相続放棄するための手続き

不動産を相続放棄するための手続きは次のとおりです。

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄の流れは概ね次の6ステップです。

  1. 必要書類の収集:被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本等を取り寄せる
  2. 相続財産調査:預貯金の残高証明書、市区町村役場で取得できる不動産の課税明細書、クレジットカード明細などで相続財産の調査を行う
  3. 申立て書類の作成:相続放棄の申述書を作成し、戸籍謄本等を添付
  4. 家庭裁判所への提出(相続放棄の申立):被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ、相続開始を知ってから3ヶ月以内に申立てる
  5. 申立人への照会:家庭裁判所が相続放棄の申立てを受け付ると、申立人が間違いなく申立てたことを確認照会書が届くため、内容を確認して返送
  6. 相続放棄申述受理通知書の送付(相続放棄完了):家庭裁判所が相続放棄を正式に受理したことを証明する相続放棄申述受理通知書が申立人に郵送されれば、相続放棄が完了

財産に関係なく相続放棄したい場合、2.の相続財産調査は行わなくても申立て可能です。
書類収集・財産調査は平日に行う手続きもあり時間がかかるため、3ヶ月以内に相続放棄を申立てるためには早めの着手が重要です。

必要書類と提出方法

相続放棄の申立てに必要な書類は次のとおりです。

  • 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本、住民票の除票:被相続人の本籍地・最後の住所地で取得できます
  • 相続人の戸籍謄本:相続人の本籍地で取得できます
     ※孫、親、兄弟姉妹が相続人の場合は相続人の順位を証明する戸籍が更に必要です
  • 収入印紙:申立1件につき800円
  • 郵便切手:照会書等の郵送に使う切手です、家庭裁判所によって規定がありますので事前に管轄の家庭裁判所で確認しましょう

相続放棄の提出は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に直接、または郵送で提出できます。
ただし、申立期限ギリギリの場合や提出書類が不安な場合には、平日に家庭裁判所への直接提出が確実です。

相続放棄後の不動産の扱い

相続放棄後の不動産の扱いは次のとおりです。

相続放棄後の不動産の帰属

相続放棄後、不動産は単純承認した相続人に帰属することが原則です。
ただし、相続人全員が相続放棄した場合は相続人不存在という状態になり、利害関係者からの申立てにより相続財産清算人が選任されます

相続財産清算人は主に次の業務を行います。

  • 相続人捜索の公告:申立てられた被相続人(亡くなった方)の相続人がいないか、いれば6ヶ月以上の期間を定めて申し出るように公告します。申し出があり、相続人であることが確認できればその人が相続財産の処分を行うことになるため、相続財産清算人の業務は終了します。申し出がなければ、相続人不存在が確定します。
  • 債権申出の公告:相続財産清算人は債権者(被相続人にお金を貸していた人)、被相続人(亡くなった方)から遺言で財産をもらう人(受遺者)がいれば申し出るように公告し、申し出があった場合に、相続財産清算人は相続財産から弁済します。
  • 特別縁故者への財産分与:被相続人と特別な縁によりお世話したような人(特別縁故者)がいれば申し出るように公告し、申し出があれば審理の上、貢献度合いによって相続財産から財産を分与します。
  • 国庫へ帰属:相続財産清算人への報酬付与を行った上でも相続財産が残っていれば、相続財産は国庫に帰属します。

相続放棄後でも相続人がいる場合は、不動産の所有権は相続放棄していない(単純承認した)相続人に帰属します。
一方、相続人不存在で相続財産を清算しても財産が残っていれば、最終的には国庫に帰属することとなります。
ただし、不動産のままでは国庫に帰属することができないため、売却換価して現金を国庫に納めることになります。
また、不動産に共有者がいる場合には例外的に、共有者に全ての持分が帰属します。
このように、相続人がいない不動産は最終的に国庫に帰属します

管理義務とその範囲

相続放棄後の不動産の管理義務は、基本的に単純承認した相続人または相続財産清算人が管理義務を負います。
しかし、前述のとおり相続放棄前に対象不動産を占有していた元相続人に限り、相続放棄後も相続人または相続財産清算人に不動産を引き渡すまでは管理義務を負います
また、管理の範囲は「自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」とされています。

専門家に相談する重要性

相続放棄の手続きが複雑である理由

相続放棄の手続きは、次の理由により複雑です。

  • 相続放棄をすべきかどうか、自分で判断する必要がある
  • 相続人の順位(子、親、兄弟姉妹など)によって必要な戸籍の種類が変わる
  • 相続の開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ提出しなければならない
  • 相続財産調査は基本的に平日、銀行や役所に出向いて行う必要があり、時間もかかる
  • 申立て書類に漏れなどがあると却下される恐れがあり、相続放棄できなくなるかもしれない
  • ローン会社など、債権者への対応方法を間違うと相続放棄できなくなる恐れがある

このように相続放棄は複雑な手続きのため、基本的には専門家への依頼をおすすめします。

専門家に依頼するメリット

相続放棄を専門家に依頼すると、次のようなメリットがあります。

  • 専門的な見地から相続放棄すべきかどうかのアドバイスをもらえる
  • 戸籍収集、財産調査を迅速かつ正確に行ってくれる
  • 自分が平日に動かなくても手続きが進む
  • 相続放棄の申立てを確実に完了させてくれる
  • 債権者への対応方法を教えてくれたり、対応してくれたりする

相続放棄の申立ては弁護士に依頼すれば費用はかかりますが、平日日中に動く必要がなく、確実に手続きを完了してくれるので安心です。
また、相続放棄するかどうかの判断には不動産の査定なども必要なので、弁護士と提携している買取業者などもおすすめです

まとめ

相続放棄を検討する際には、預貯金や負債、不動産の価値や維持費・管理義務を総合的に考慮する必要があります。
相続する場合と放棄する場合のメリット・デメリットを比較し、慎重に決断することが大切ですが、相続放棄には3ヶ月という期限があるため、相続開始後すぐにでも始める必要があります。
訳あり不動産相談所では、空き家になった親の家など訳あり不動産を専門に取り扱っており、適正価格での買取も行っています
家の価値が分からないので気になる、何から手を付けて良いか分からない、相続放棄の期限が迫っているのでできるだけ早く査定が欲しい、といった方は訳あり不動産にご相談ください。

この記事の担当者

担当者③

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