
別居中に共有不動産は売却できる?売却のタイミングや注意点を解説!
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「不動産を売却するとき、消費税ってかかるの?」
「どんな場合に課税されて、どうやって計算するんだろう?」
「少しでも税金の負担を減らす方法はないかな?」
不動産売却は人生で何度も経験するものではないため、税金に関する疑問や不安を抱える方は少なくありません。
特に消費税は、売主の状況や不動産の種類によって課税されるかどうかが変わるため、非常に複雑です。
この記事では、不動産売却における消費税の基本的な知識から、課税・非課税となるケースの違い、借地権価格目安の計算方法まで詳しく解説します。
目次
まず、不動産売却と消費税の基本的な関係性について理解を深めましょう。
どのような取引が課税対象となり、なぜ土地と建物で扱いが違うのか、そして誰が税金を納める義務を負うのか、という基礎知識を押さえることが重要です。
結論から言うと、不動産売却で消費税がかかる場合とかからない場合があります。
最も一般的なケースである、個人がマイホーム(居住用不動産)を売却する場合は、消費税はかかりません。
これは、個人の生活のための資産売却が「事業」とは見なされないためです。
一方で、個人事業主や法人が事業として使用していた不動産(事務所、店舗、賃貸アパートなど)を売却する場合には、消費税が課税されます。
このように、消費税の有無は「誰が」「何を(不動産の種類・用途)」売却するのかによって決まります。
消費税が課されるのは、国内において「事業者が事業として、対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供」と法律で定められています。
これを「課税取引」と呼びます。不動産売却がこれに該当するかどうかがポイントです。
法人が事務所ビルを売却したり、個人事業主が賃貸アパートを売却したりする行為は、まさにこの「事業者が事業として行う資産の譲渡」に当てはまるため、課税対象となるのです。
逆に、個人がマイホームを売却する行為は「事業として」に該当しないため、消費税はかかりません。
不動産は「土地」と「建物」で構成されていますが、消費税法上の扱いは全く異なります。
区分 | 消費税の扱い | 理由 |
---|---|---|
建物 | 課税対象 | 建物は建築され、使用することで劣化・消耗していく「消費される資産」と考えられるため。 |
土地 | 非課税 | 土地は使用しても価値が減る「消費」という概念に馴染まないため、「資本の移転」と見なされる。 |
この違いは非常に重要です。
たとえ事業用不動産の売却であっても、消費税が課されるのは建物部分の価格に対してのみであり、土地の価格には消費税がかかりません。
そのため、売買代金を土地と建物に分けて計算する必要があります。
事業者は、その年の2年前(法人は前々事業年度)の課税売上高によって「課税事業者」と「免税事業者」に分けられます。
たとえ事業用不動産を売却したとしても、売主が免税事業者であれば消費税を納める必要はありません。
それでは、具体的にどのような場合に消費税が課税されるのでしょうか。
ここでは、代表的な3つのケースを解説します。ご自身の状況が当てはまるか確認してみましょう。
最も典型的な課税ケースです。
個人事業主や法人が、事業のために所有・使用していた不動産を売却する場合、その建物部分の売却代金が消費税の課税対象となります。
例えば、以下のような不動産の売却が該当します。
売主が課税事業者(基準期間の課税売上高1,000万円超)であることが前提です。
自宅の一部を事務所や店舗として使用している、いわゆる「自宅兼事務所」のような不動産を売却する場合、事業用として使用している部分のみが課税対象となります。
この場合、売却価格全体を居住用部分と事業用部分に分ける必要があります。
一般的には、床面積の割合など、客観的で合理的な基準を用いて按分計算します。
例えば、全体の床面積のうち40%を事業用として使用していた場合、建物価格の40%分に対して消費税が課税されることになります。
親から事業用不動産(賃貸アパートなど)を相続し、その不動産を売却する場合も注意が必要です。
被相続人(亡くなった親)の事業を引き継いでいなくても、相続した不動産が事業用資産であれば、売却時に消費税が課税される可能性があります。
ただし、これは売主自身が課税事業者である場合に限られます。
もし売主がサラリーマンなどで課税事業者でなければ、相続した事業用不動産を売却しても消費税はかかりません。
一方で、被相続人が亡くなった年に課税事業者であった場合、その納税義務を相続人が引き継ぐケースもあるため、専門家への確認が必要です。
次に、消費税がかからないケースを見ていきましょう。
多くの個人の方はこちらに該当する可能性が高いです。
前述の通り、個人が生活のために使用していたマイホームやセカンドハウス(別荘)などを売却する場合、消費税は一切かかりません。
これは、売主が個人事業主で課税事業者であったとしても同様です。
あくまで「事業」ではなく「プライベートな資産」の売却と見なされるためです。
ほとんどのサラリーマンや公務員の方が自宅を売却するケースは、この非課税取引に該当します。
売主が免税事業者(基準期間の課税売上高が1,000万円以下)である場合、たとえ事業用不動産を売却したとしても、消費税の納税義務は発生しません。
買主から消費税を受け取る必要も、国に納める必要もありません。
ただし、注意点があります。
事業用不動産の売却によってその年の課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々年から課税事業者になる可能性があります。
また、買主が課税事業者である場合、インボイス制度との関連で取引に影響が出る可能性があるため後述します。
更地や、建物を取り壊して土地だけを売却する場合など、土地のみの売却であれば消費税はかかりません。
これは、土地が消費税法上、非課税取引と定められているためです。
売主が課税事業者であろうと、その土地を事業用に使っていようと関係ありません。
消費税が課税されるケースに該当した場合、次は「いくら納税するのか」を正確に計算する必要があります。
ここでは計算の仕組みと、トラブルを避けるためのポイントを解説します。
消費税は建物にのみ課税されるため、売買価格を「土地の価格」と「建物の価格」に分ける必要があります。
これを価格の按分(あんぶん)と呼びます。
按分方法はいくつかありますが、税務署に認められやすい客観的な方法として、固定資産税評価額の比率で按分する方法が一般的です。
以下は具体的な計算例です。
売買総額:5,000万円
固定資産税評価額(土地):1,800万円
固定資産税評価額(建物):1,200万円
評価額の合計と比率の計算
建物価格の算出
消費税額の計算
このケースでは、200万円の消費税が発生します。
売買価格の消費税表示には「内税(うちぜい)」と「外税(そとぜい)」の2種類があります。
個人間の取引では総額表示が一般的ですが、契約書でどちらの表示になっているか確認が重要です。
もし売買契約書に「5,000万円(うち建物価格2,200万円)」としか書かれていない場合、税込価格から消費税額を逆算する必要があります。
税込価格からの計算式: 消費税額 = 税込建物価格 ÷ 1.1 × 0.1
例:2,200万円 ÷ 1.1 × 0.1 = 200万円
後々のトラブルを防ぐため、売買契約書には以下の項目を明確に記載することが極めて重要です。
これらの内訳を明記することで、「この価格は税込なのか、税抜なのか」といった認識の齟齬を防ぎ、税務申告の際にもスムーズに手続きを進めることができます。
不動産会社に契約書作成を依頼する際は、必ず内訳の明記をお願いしましょう。
消費税は大きな金額になる可能性があるため、仕組みを理解し、可能な対策を講じることが重要です。
ここでは、売主・買主双方の視点や、最新のインボイス制度への対応について解説します。
不動産売却における消費税は、売主が買主から預かり、国に納付するという流れになります。
つまり、直接的に負担するのは買主です。
しかし、買主の立場からすると、消費税込みの総額が支払額になります。
そのため、消費税がかかる物件は、かからない物件に比べて価格が高くなり、競争力が低下する可能性があります。
結果として、売主が価格交渉で譲歩せざるを得ず、間接的に消費税分を負担する形になることも少なくありません。
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、不動産売却にも影響を与えます。
もし買主が課税事業者で、購入した不動産を事業に使う場合、支払った消費税を自身の納税額から控除(仕入税額控除)するために、売主が発行する「インボイス(適格請求書)」が必要になります。
このため、買主(課税事業者)は、インボイスを発行できない免税事業者の物件を避けたり、消費税相当額の値引きを要求したりする可能性があります。
免税事業者が事業用不動産を売却する際は、この点を踏まえた価格戦略が必要になります。
仕入税額控除は、課税事業者が消費税を納める際に、「売上にかかった消費税額」から「仕入れや経費にかかった消費税額」を差し引くことができる仕組みです。
不動産売却においては、売却で預かった消費税から、その取引にかかった経費(仲介手数料や司法書士報酬など)に含まれる消費税を差し引いて納税額を計算します。
場合によっては、仕入れにかかった消費税の方が多くなり、差額が還付されるケースもあります。
不動産売却単体で消費税の還付が発生する具体的な条件や頻度については、税理士などの専門家にご確認ください。
ここまで解説したように、不動産売却の消費税は非常に複雑です。
特に、事業用不動産の売却、自宅兼事務所の売却、インボイス制度への対応などは、判断が難しいケースが多々あります。
自己判断で進めてしまうと、思わぬ納税漏れや、逆に活用できたはずの制度を見逃すリスクがあります。
最も確実で安全な方法は、不動産売却に精通した業者に相談することです。
「訳あり不動産相談所」も豊富な知識をもつ専門業者の一つです。
複雑になりがちな内容ですが、専門家があなたの状況に応じた最適なアドバイスを提供し、適正な申告と節税をサポートします。
最後に、不動産売却の消費税に関してよく寄せられる質問にお答えします。
土地は、使用しても価値がなくなる「消費」という性質を持たないためです。
消費税法の考え方では、土地の売買は「資本の移転」とされており、課税の対象外(非課税取引)と定められています。
これは法律で明確に決められているルールです。
売却先が不動産業者(課税事業者)であっても、ルールは同じです。
あなたが個人でマイホームを売却する場合は消費税はかかりません。
一方で、あなたが課税事業者で事業用不動産を売却する場合は、建物部分に消費税がかかります。
この場合、不動産業者からインボイスの発行を求められることになります。
なお、売却を仲介してもらう不動産業者に支払う仲介手数料には、必ず消費税がかかります。
原則として、以下のいずれかに該当すると課税事業者になります。
インボイス制度の開始に伴い、売上高が1,000万円以下でも、自ら選択してインボイス発行事業者(=課税事業者)になるケースが増えています。
建物の築年数や古さに関わらず、消費税の課税ルールは変わりません。
課税事業者が事業用建物を売却する限り、その建物価格に対して消費税が課税されます。
ただし、建物が非常に古い場合、その資産価値は低くなります。
売買価格を土地と建物に按分した際に、建物価格が非常に低く(例えば100万円など)なれば、それに応じて消費税額も少なくなります。
しかし、建物価格がゼロでない限り、消費税が完全になくなることはありません。
この記事では、不動産売却における消費税について、課税・非課税の判断基準から計算方法、注意点まで詳しく解説しました。
重要なポイントは、「誰が(個人の居住用か、事業用か)」「何を(土地か、建物か)」売却するかで、消費税の有無が決まるということです。
特に、個人事業主や法人が事業用不動産を売却する場合、建物部分に消費税が課税され、さらにインボイス制度への対応も必要になるなど、注意すべき点が数多く存在します。
ご自身の状況を正しく把握し、売買契約書の内容をしっかり確認することが、予期せぬトラブルや損失を防ぐ鍵となります。
少しでも不安や疑問がある方は、不動産取引と税務に詳しい専門業者に相談することをおすすめします。
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