
空き家の行政代執行とは?解体費用は所有者負担って本当?リスクと回避策を解説
詳しく見る

「負動産あげます」という言葉は、かつて資産の象徴であったはずの土地や建物が、現代社会においていかに重い「負債」へと変貌したかを物語っています。
利用価値が見いだせず、売却も困難、しかし所有しているだけで固定資産税や管理費がのしかかる。
そんな「負動産」は、少子高齢化や人口の都市部集中を背景に増加の一途をたどっています。
この記事では、そんな負動産を0円で手放すための方法から、その裏に潜む費用や法的な注意点、活用できる補助金制度まで解説します。
負動産の重荷から解放されるための一歩を、ここから踏み出しましょう。
目次
なぜ、資産であるはずの不動産が「負動産」と呼ばれるようになってしまったのでしょうか。
その背景と、放置し続けることのリスクについて、法改正の動向も踏まえながら解説します。
負動産とは、利用価値が低く、買い手も見つからないため、所有しているだけで経済的な負担となる不動産を指す言葉です。
具体的には、過疎地の空き家や山林、再建築が難しい土地、複雑な権利関係を持つ物件などが該当します。
かつては土地神話に支えられ、不動産は持っているだけで価値が上がる資産と見なされていました。
しかし、人口減少社会に突入し、地方の過疎化が進む中で、需要のない土地や建物の価値は下落傾向にあります。
それにもかかわらず、固定資産税や管理コストは発生し続けるため、資産どころか所有者の経済的、精神的負担を増大させる「負債」となっているのです。
負動産を「価値がないから」と放置してしまうのは危険です。
近年の法改正により、所有者が負う管理責任は一段と重くなっており、放置することで思わぬ負担やトラブルにつながる可能性があります。
まず、金銭的負担として、固定資産税や都市計画税が毎年課税されます。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、管理不全な空き家は、2023年12月に改正された空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき「管理不全空家」に指定される可能性があります。
自治体から改善の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大で6倍に跳ね上がります。
勧告に従わず「特定空家」に指定されれば、命令違反による50万円以下の過料や、行政代執行による強制解体とその費用請求といった厳しい措置が待っています。
| 放置リスク | 具体的な内容 |
|---|---|
| 税負担の増大 | 固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大6倍になる可能性がある。 |
| 罰則(過料) | 相続登記を怠ると10万円以下の過料。「特定空家」に関する命令違反で50万円以下の過料。 |
| 損害賠償責任 | 建物倒壊や竹木の越境などで第三者に損害を与えた場合、多額の賠償を命じられるケースも。 |
| 行政による介入 | 行政からの助言・指導・勧告・命令。最終的には行政代執行による強制解体が行われ、費用が請求される。 |
これらのリスクは、問題を先送りにするほど深刻化します。
負動産問題は、もはや見て見ぬふりが許されない社会全体の課題なのです。
負動産を0円で手放せると聞くと、魅力的に思えるかもしれません。
しかし、その言葉の裏には知っておくべきコストや法的な責任が隠されています。
安易な判断は、将来のトラブルにつながりかねません。
負動産を実質的に0円、あるいはそれに近い形で手放す方法はいくつかあります。
代表的な方法としては、相続が発生した場合の「相続放棄」、国に土地を引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」、そして個人や法人に無償で譲る「無料譲渡(寄付)」などが挙げられます。
また、不動産会社によっては、通常の仲介では売れない物件を直接買い取る「不動産買取」や、所有者が費用を支払って引き取ってもらう「有償引取サービス」もあります。
近年では、0円物件を専門に扱う「マッチングサイト」を活用し、DIY目的の人や地方移住希望者に譲渡するケースも増えています。
どの方法が最適かは、物件の状況や所有者の希望によって異なります。
「0円で譲渡」といっても、手続きに付随する費用が全くかからないわけではありません。
所有者と譲り受ける側の双方に、以下のようなコストが発生する可能性があります。
| 項目 | 所有者(あげる側)の主な費用 | 譲受人(もらう側)の主な費用 |
|---|---|---|
| 税金 | 譲渡所得税(個人への譲渡では通常発生しないが、法人相手の場合は注意) | 贈与税、不動産取得税、登録免許税、固定資産税・都市計画税(翌年度から) |
| 専門家への報酬 | 司法書士への登記依頼費用、弁護士・不動産会社への相談料 | 司法書士への登記依頼費用 |
| その他諸経費 | 土地の測量費用、建物の解体費用、残置物撤去費用、契約書の印紙代 | 不動産の維持管理費、リフォーム費用、火災保険料 |
特に、土地の境界が確定していない場合は測量が必要になり、数十万円の費用がかかることもあります。
0円で手放すつもりが、予期せぬ出費につながるケースも少なくないため、事前にどのような費用が発生するかを把握しておくことが重要です。
負動産を相続してしまった場合、「相続放棄」が最も手軽な解決策に思えるかもしれません。
相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述すれば、負債も含めて一切の財産を引き継がずに済みます。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
相続放棄をしても、次に相続人となる人が管理を始めるまで、「現にその家を占有している者(同居していた相続人など)」に管理責任が残ります。
管理を怠って第三者に損害を与えれば、賠償責任を問われるリスクは消えません。
また、相続放棄は預貯金などのプラスの財産もすべて手放すことになるため、特定の負動産だけを放棄したい場合には不向きです。
代替案としては、後述する相続土地国庫帰属制度の利用や、不動産会社への買取依頼などが挙げられます。
負動産の処分には、法律、税務、不動産取引など複雑な知識が絡み合います。
自分一人で判断して進めるのは危険です。
ここでは、なぜ専門家への相談が不可欠なのか、その理由とポイントを解説します。
「どうせ価値がない」と自己判断してしまうのは早計です。
一見すると価値がないように見える土地でも、専門家の視点から見れば意外な活用法が見つかることがあります。
例えば、隣地の所有者にとっては土地を広げるチャンスであったり、特定の事業者にとっては資材置き場や太陽光発電の適地であったりする可能性もゼロではありません。
まずは不動産会社に査定を依頼し、客観的な価値や活用法の可能性を探ることが第一歩です。
その上で、売却、譲渡、国庫帰属など、どの選択肢が最も現実的かを検討しましょう。
早期に相談することで、無駄な税金や管理費を払い続ける事態を避けられます。
個人間で0円譲渡を行う際に注意すべき点の一つが「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」です。
これは、引き渡した不動産に契約内容と異なる欠陥(雨漏りやシロアリ被害、地中埋設物など)があった場合に、譲渡人が譲受人に対して責任を負うというものです。
たとえ0円の譲渡であっても、この責任を問われるリスクは存在します。
トラブルを避けるためには、譲渡契約書に「契約不適合責任を一切負わない(免責)」という特約を必ず明記することが不可欠です。
契約書の作成は、司法書士や弁護士といった法律の専門家に依頼し、後々の紛争の種を残さないように万全を期すべきです。
負動産問題を相談する専門家を選ぶ際は、いくつかのポイントを確認しましょう。
不動産会社であれば、宅地建物取引業の免許を持っていることは大前提です。
また、近年増えている「負動産引取業者」に依頼する場合は、料金体系が明確で、費用が後払いであるかも重要な判断基準です。
高額な前金を要求する業者は悪質なケースがあるため注意が必要です。
相談のタイミングは、「相続が発生した時」や「管理が負担だと感じ始めた時」など、できるだけ早い段階が理想です。
問題を先延ばしにするほど、相続人が増えて権利関係が複雑になったり、建物の劣化が進んで対策費用がかさんだりする可能性があります。
ここでは、負動産を0円、あるいはそれに近い形で手放すための具体的な方法について、それぞれのメリット・デメリットや手続きの流れを詳しく解説します。
通常の仲介では買い手がつかないような負動産でも、専門の不動産買取業者に直接売却する方法があります。
メリットは、迅速に現金化でき、契約不適合責任が免責されるケースが多い点です。
業者によっては、最短数日で手続きが完了することもあります。
一方、デメリットは、買取価格が市場価格の7割~8割程度低くなる傾向があることです。
また、売却すら難しい物件の場合、所有者が費用を支払って引き取ってもらう「有償引取サービス」もあります。
費用相場は数十万円から100万円以上と高額になることもありますが、確実に手放せる最終手段となり得ます。
業者選びは慎重に行いましょう。
費用をかけずに手放す方法として、無料譲渡(寄付)があります。
しかし、寄付先によってハードルは大きく異なります。
2023年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」は、相続または遺贈によって取得した不要な土地を、一定の負担金を支払うことで国に引き取ってもらう制度です。
メリットは、相続放棄と違って特定の土地だけを手放せる点です。
しかし、利用には以下のような厳しい要件があります。
詳しくは法務省のページもご確認ください。
| 制度利用の主な要件 |
|---|
| 建物が存在しないこと(更地であること) |
| 担保権や使用収益権が設定されていないこと |
| 土壌汚染がないこと |
| 境界が明確で、所有権の存否や範囲の争いがないこと |
| 崖地など、管理に過大な費用・労力がかからないこと |
申請時には土地1筆あたり14,000円の審査手数料がかかります。
なお、土地の単位を「筆」と言い、登記簿上で1つの土地を「1筆」と表記します。
申請が承認されると、原則20万円(一部の宅地や森林は面積に応じて変動)の負担金を納付する必要があります。
手続きは法務局で行いますが、要件が厳しいため、事前に専門家に相談することをおすすめします。
近年、自治体が運営する「空き家バンク」や、民間企業が運営する「0円物件マッチングサイト」が増えています。
これらのプラットフォームに物件情報を登録すると、全国から貰い手を探すことができます。
DIY目的で格安の空き家を探している人や、地方移住を検討している人など、ニッチな需要に応えられる可能性があります。
登録は比較的簡単ですが、すぐに貰い手が見つかるとは限らず、成約までに時間がかかることが多いです。
また、個人間取引となるため、前述の契約不適合責任などのトラブルには十分な注意が必要です。
負動産の中には、特に取り扱いが難しいものもあります。
これらの特殊な不動産は、通常の物件以上に専門的な知識が求められるため、専門家に相談して進めましょう。
ここでは、負動産処分で利用できる制度をご紹介します。
負動産処分で利用できる制度として代表的なものが「空き家解体補助金」です。
これは、倒壊の危険性があるなどの要件を満たした空き家を解体する際に、費用の一部を自治体が補助する制度です。
補助金額や対象条件は自治体によって大きく異なり、一般的には解体費用の1/5~1/2程度、上限額としは20万円~100万円程度が目安です。
必ず解体工事に着手する前に「事前申請」が必要なため、注意しましょう。
工事後の申請は認められないため、まずは空き家がある市区町村の役場(空き家対策課など)に問い合わせ、制度の有無や条件を確認しましょう。
相続した空き家を売却する場合、一定要件を満たせば、譲渡所得(売却益)の金額から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」という特例があります。
不動産会社に見積もりを依頼し、有償で買い取ってもらえそうな場合は、特例が適用されるか必ずチェックしましょう。
この特例を受けるための主な要件は以下の通りです。
他にも特例を受けるための要件がありますので、詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。
すべての負動産が手放すしかないわけではありません。
立地や状態によっては、リノベーションやDIYによって価値を生み出す「資産」に変えられる可能性も秘めています。
例えば、建物をリノベーションして賃貸物件やシェアハウス、民泊施設として活用する、更地にして駐車場やトランクルーム、太陽光発電設備を設置するといった方法があります。
最近では、古民家の趣を活かしたカフェやアトリエとして再生する事例も増えています。
ただし、いずれも初期投資が必要であり、地域のニーズや採算性を慎重に見極める必要があります。
不動産コンサルタントなどに相談し、事業計画を立ててから実行することが成功の鍵です。
負動産の処分に関して、多くの方が抱く疑問について解説します。
すぐに管理責任がなくならないこともあります。
被相続人と同居していたなど、「現にその家を占有している者」と認められた場合は、次に相続する人が管理を始められる状態になるまでは、管理責任が残ります。
管理を怠り第三者に損害を与えた場合、損害賠償を請求されるリスクがあるため注意が必要です。
0円で譲渡できる可能性はあります。
最も現実的なのは、隣接する土地の所有者への譲渡です。
相手にとっては土地の利用価値が高まるため、無償であれば引き受けてくれる場合があります。
また、0円物件のマッチングサイトなどを活用して、特定の目的(DIY、家庭菜園など)を持つ人を探す方法もあります。
相談内容や依頼先によって、相談費用は異なります。
不動産会社の売却査定は無料の場合が多いです。
司法書士や弁護士への法律相談は、30分5,000円~1万円程度が相場です。
正式に手続きを依頼する場合は、別途数万円から数十万円の報酬が発生します。
まずは初回無料相談などを活用して、見積もりを取ることをお勧めします。
専門家や専門業者に代理で対応してもらうことが可能です。
不動産会社や管理会社に現地の調査や管理を委託したり、司法書士にオンラインで登記手続きを依頼したりすることができます。
遠方であることを理由に放置せず、まずは電話やメールで専門家に相談してみましょう。
譲渡後に法的な責任を問われる可能性はあります。
特に注意すべきは「契約不適合責任」です。
譲渡後に雨漏りや地中の障害物といった隠れた欠陥が見つかった場合、損害賠償などを請求されるリスクがあります。
これを回避するためには、必ず専門家が作成した契約書で「契約不適合責任免責」の特約を明記することが重要です。
「負動産あげます」という言葉の裏には、放置することで増大する税負担や罰則、損害賠償といった深刻なリスクが潜んでいます。
法改正により、不動産所有者の管理責任は年々厳しくなっており、もはや問題を先送りにすることはできません。
負動産を手放すには、相続放棄、国庫帰属制度、売却、譲渡など様々な方法がありますが、どの方法にもメリット・デメリット、そして費用がかかります。
自己判断で進めてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
最も重要なことは、一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で不動産会社や司法書士といった専門家に相談することです。
客観的な価値を把握し、法的なリスクを回避しながら、あなたと物件にとって最適な解決策を見つけ出しましょう。
訳あり不動産相談所では、処分に困っている家の買取を積極的に行なっていますので、ぜひご相談ください。
この記事の担当者

担当者③