
不動産の相続放棄とは?手続き方法と注意点を徹底解説
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「空き家を0円で差し上げます」という言葉は、地方移住を考えたり、低コストでマイホームを手に入れたい人に魅力的に映るかもしれません。
しかし、その甘い響きの裏には、予想外の出費や法的リスクが潜んでいます。
物件価格が0円でも、実際には完全無料で家を取得できるわけではありません。
なお、空き家には思わぬ価値がある可能性があるため、手放したい方は無償譲渡を検討する前に、不動産会社へ無料査定を依頼し、有償での売却が可能か確認することをおすすめします。
本記事では、「空き家差し上げます」という無償譲渡の実態を、譲る側・譲り受ける側の両方の立場から詳しく解説します。
0円で提供される背景、見落としがちな費用、トラブルを避けるためのポイントまで紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
「空き家を差し上げます」とは、文字通り物件を0円で第三者に譲り渡すことを指します。
これは法律上「贈与」にあたり、所有者と譲り受ける人の合意によって成立する契約です。
近年、人口減少や高齢化に伴い、日本全国で空き家が増加し続けています。
このような状況を背景に、維持管理に困った所有者が「無料でもいいから手放したい」と考え、空き家バンクや専門のマッチングサイトを通じて無償譲渡の相手を探すケースが増えているのです。
しかし、この取引には特有のルールや注意点があるため、安易に飛びつくのは危険です。
なぜ、価値があるはずの不動産が「0円」で提供されるのでしょうか。
その背景には、所有者が抱える切実な事情があります。
空き家は所有しているだけで、固定資産税や都市計画税が毎年課税されます。
さらに、庭の手入れや建物の修繕といった管理にも費用と手間がかかり、所有者にとって大きな経済的・精神的負担となります。
特に、老朽化が進み倒壊の危険性などがあると自治体から「特定空家」に指定され、固定資産税の優遇措置が解除されて税額が最大6倍に跳ね上がるリスクもあります。
売却しようにも買い手がつかない、かといって解体するには多額の費用がかかる。
こうした「負動産」と化した空き家を、費用をかけずに手放したいという所有者の切実な思いが、「0円でもいいから誰かに譲りたい」という無償譲渡の動機につながっているのです。
空き家を無償で譲渡することは、所有者にとってメリットばかりではありません。
デメリットやリスクもしっかりと理解した上で、慎重に判断する必要があります。
差し出す側の最大のメリットは、維持管理の負担や税金の支払いから解放されることです。
しかし、個人間での取引はトラブルに発展しやすく、特に建物の欠陥(瑕疵)に関する「契約不適合責任」を問われないよう、契約書の内容を専門家と詰める必要があります。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 費用 | ・固定資産税や管理費の負担がなくなる ・高額な解体費用を負担せずに済む | ・売却すれば得られたはずの利益がない ・譲渡相手が見つからない可能性がある |
| 責任 | ・空き家放置による近隣トラブルのリスクがなくなる | ・契約内容が不十分だと後々トラブルになる ・契約不適合責任を問われる可能性がある |
| 手続き | ・「負動産」から解放される精神的メリット | ・譲渡相手探しや契約手続きに手間がかかる |
一方、0円で空き家を譲り受ける側にも、大きなメリットとそれ以上に注意すべきデメリットが存在します。
安易な決断は、将来の大きな負担につながりかねません。
譲り受ける側にとって、物件価格が0円であることは最大の魅力です。
しかし、税金やリフォーム費用など、実際には多額の費用が発生することを覚悟しなければなりません。
特に、無償譲渡される物件は老朽化が著しいケースが多く、住める状態にするまでに数百万円以上の費用がかかることも珍しくありません。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 費用 | ・物件の購入費用がかからない ・初期投資を大幅に抑えられる | ・贈与税や不動産取得税などの税金がかかる ・高額なリフォーム・修繕費用が発生する可能性がある ・継続的な維持管理費(固定資産税など)がかかる |
| 物件・環境 | ・理想の田舎暮らしや事業拠点を得られる可能性がある | ・建物の老朽化が激しい、再建築不可物件などの可能性がある ・交通の便が悪い、インフラが未整備など立地条件が悪い場合が多い |
| 手続き・責任 | ・自治体の補助金制度を利用できる場合がある | ・契約トラブルに巻き込まれるリスクがある ・所有者として管理責任を負うことになる |
もしあなたが空き家を手放したいと考えているなら、無償譲渡の前に「不動産買取」という選択肢を検討することをおすすめします。
買取とは、不動産会社が直接空き家を買い取ってくれるサービスです。
無償譲渡のデメリットを解消し、さらにメリットを得られる可能性があります。
無償譲渡では1円にもなりませんが、買取であれば、たとえ市場価値が低い空き家であっても適正な価格で買い取ってくれます。
老朽化が進んでいたり、立地が悪かったりして「売れない」と諦めていた物件でも、思わぬ価格で現金化できる可能性があります。
買取業者はリフォームや再販のノウハウを持っているため、個人では価値を見出せない物件にも価値を見出してくれます。
空き家の売却で大きな負担となるのが、室内に残された家具やゴミなどの残置物処理です。
専門業者に依頼すれば数十万円の費用がかかることもあります。
しかし、多くの買取業者では残置物をそのままの状態で引き取ってくれます。
面倒な片付けや清掃、処分の手間と費用を一切かけることなく、現状のまま家を手放せるのは大きなメリットです。
個人間で不動産を取引する際に最も怖いのが、引き渡し後に雨漏りやシロアリ被害などの欠陥が見つかった場合に、売り主が責任を問われる「契約不適合責任」です。
しかし、相手がプロの不動産買取業者であれば、この契約不適合責任を免除する特約を付けて契約するのが一般的です。
売却後に予期せぬトラブルに巻き込まれる心配がなく、安心して取引を終えることができます。
一般的な仲介による売却では、買い手が見つかるまでに数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。
しかし、買取の場合は不動産会社が直接の買い手となるため、話がまとまれば査定から現金化まで最短1ヶ月程度というスピーディーな取引が可能です。
すぐにでも空き家を手放して現金化したい、という方には最適な方法です。
空き家を譲渡または仲介で売却する場合、取得希望者の内見に合わせて何度も家を掃除するほか、スケジュールを調整する必要があります。
遠方に住んでいる場合は、その都度現地に赴かなければならず、大きな負担となります。
買取であれば、不動産会社の担当者による一度の査定で完了するため、こうした煩わしい手間はかかりません。
「物件価格0円」という言葉に惑わされてはいけません。
空き家を無償で譲り受ける際には、物件価格以外にも様々な費用が発生します。
無償譲渡は税法上「贈与」とみなされるため、複数の税金が課されます。
これらは物件の評価額(固定資産税評価額)に基づいて計算されるため、たとえ0円で譲り受けても納税義務が発生します。
| 税金の種類 | 内容 | 納税のタイミング |
|---|---|---|
| 贈与税 | 個人から財産を無償で受け取った際にかかる税金 | 取得した翌年の2月1日~3月15日 |
| 不動産取得税 | 不動産を取得した際に一度だけかかる都道府県税 | 取得後、納税通知書が届いてから |
| 登録免許税 | 所有権移転登記の際に法務局に納める税金 | 登記申請時 |
税金以外にも、様々な諸費用が発生します。
所有権移転登記を司法書士に依頼する場合、5万円~10万円程度の司法書士報酬が必要です。
また、空き家バンクなどを介して不動産会社が仲介に入る場合は、仲介手数料がかかることもあります。
さらに、火災や自然災害に備えるための火災保険料も必須です。
これらの費用を合計すると、税金と合わせて初期費用だけで50万円~100万円以上かかるケースも少なくありません。
0円で譲渡される空き家の多くは、築年数が古く、長年放置されてきたため、そのままでは住めない状態がほとんどです。
雨漏りの修理、水回り設備の交換、シロアリ駆除、耐震補強など、大規模なリノベーションが必要になる可能性があります。
これらのリフォーム・修繕費用は、数百万円から、場合によっては1,000万円を超えることもあります。
物件の状態を事前に専門家に診断してもらい、必要な費用を正確に把握しておくことが極めて重要です。
「タダでもらったのに、新築を建てるより高くついた」という事態に陥らないよう、慎重な資金計画が求められます。
費用面以外にも、無償譲渡には様々なトラブルのリスクが潜んでいます。
事前にリスクを理解し、適切な対策を講じることが成功の鍵です。
個人間での取引では、契約内容が曖昧なまま話が進んでしまう危険性があります。
後々のトラブルを防ぐためにも、必ず司法書士などの専門家を交えて「贈与契約書」を作成しましょう。
特に注意すべきは「契約不適合責任」です。
譲り受けた後に、契約書に記載のなかった重大な欠陥(雨漏り、シロアリ被害など)が見つかった場合、原則として譲渡した側に修繕などを請求できます。
しかし、場合によっては「現状有姿(現状のまま引き渡す)」とし、譲渡者は一切の責任を負わないとする特約が付くこともあります。
契約書の内容を細部まで確認し、納得した上で署名することが大切です。
長年放置された空き家では、電気・ガス・水道といったライフラインが停止されていたり、配管が劣化して使用できなかったりする場合があります。
契約前にインフラの状況や再開にかかる費用を確認しておく必要があります。
また、地方によっては、都市部とは異なる独自のルール(ゴミ出しの決まり、町内会活動への参加義務など)があります。
事前に自治体や近隣住民に話を聞き、その地域のルールや慣習を理解し、適応する姿勢が求められます。
移住後の生活をスムーズにスタートさせるためには、地域コミュニティとの良好な関係構築が不可欠です。
自治会への加入や地域のイベントへの積極的な参加などを通じて、自らコミュニケーションを図る努力が大切になります。
また、「理想の田舎暮らし」と現実とのギャップに悩むケースも少なくありません。
スーパーや病院までの距離、交通の便、仕事の有無など、生活の利便性を現実的にシミュレーションし、移住前に「お試し移住」などを利用して現地の生活を体験してみることも有効な対策です。
リスクを理解した上で、それでも無償譲渡の物件を探したいという方のために、賢い探し方と選び方のポイントをご紹介します。
無償譲渡物件を探す主な方法は以下の通りです。
それぞれに特徴があるため、自分に合った方法を選びましょう。
良い物件を見つけるためには、自分の中で「譲れない条件」と「妥協できる条件」を明確にしておくことが重要です。
例えば、「建物の状態は悪くても、DIYで直すから気にしない。その代わり、日当たりと広い庭は譲れない」といったように、自分なりの優先順位をつけましょう。
立地、建物の状態、周辺環境、改修にかかる予算など、複数の視点から総合的に判断することが、後悔しない物件選びにつながります。
無償譲渡にこだわらず、視野を広げてみることも大切です。
不動産会社に相談すれば、インターネットには掲載されていない格安の中古物件情報を紹介してもらえる可能性があります。
また、プロの視点から物件のメリット・デメリットを客観的に評価してもらえるほか、契約や手続きも安心して任せられます。
結果的に、無償譲渡物件をリフォームするよりもトータルコストを抑えられるケースも少なくありません。
「空き家を差し上げます」という無償譲渡は、譲る側・譲り受ける側双方にとってメリットがある一方で、税金、高額な修繕費、契約トラブルといった多くのリスクを伴います。
物件価格が0円だからといって安易に飛びつくのではなく、隠れたコストと責任を正確に理解することが不可欠です。
空き家を手放したい所有者の方は、無償譲渡だけでなく、「買取での売却」という選択肢もぜひ検討してみてください。
一方、空き家を譲り受けたい方は、建物診断や資金計画を徹底し、慎重に判断することが重要です。
どちらの立場であっても、個人で判断に迷った場合は、専門家である不動産会社に相談することが、トラブルを未然に防ぎ、後悔のない選択をするための最も確実な方法です。
訳あり不動産相談所では、空き家の買取や紹介を積極的に行っていますので、お困りの方はぜひご相談ください。
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