
空き家の行政代執行とは?解体費用は所有者負担って本当?リスクと回避策を解説
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空き家を適切に管理せずに放置していると行政代執行で強制的に解体される恐れがあります。
行政代執行となると高額な解体費の請求を受けるなどのリスクもあるので、注意が必要です。
とはいえ、いきなり行政代執行されるわけではありません。
そのため、行政代執行までの流れや回避の流れを理解しておくことが大切です。
この記事では、行政代執行の基本やリスク・流れや回避方法などを詳しく解説します。
目次
行政代執行とは、地方自治体などの行政による強制執行の一種です。
何かしらの義務を負いつつもその義務を履行しない人に代わって行政が義務を果たし、その費用の徴収を行います。
なお、行政代執行が行われる理由にはさまざまありますが、本記事では「空き家特措法」の行政代執行について解説します。
行政代執行法では、行政代執行ができる要件として以下を定めています。
義務を果たさないことが著しく公益に反する場合のみのため、少々の違反で強制代執行となる可能性は低いでしょう。
空き家に対しても「著しく公益に反する」のハードルが高く、行政代執行できないケースが多く自治体が頭を悩ましていました。
そこで、平成27年に空き家問題への対応として定められたのが「空き家対策の推進に関する特別措置法(空き家特措法)」です。
これにより、以下のようなケースでは行政代執行が可能となっています。
具体的には、管理を放置することで特定空き家に指定され、なおかつ行政からの改善命令にも従わない場合、以下のような行政代執行が行われる恐れがあります。
また、行政代執行後には、執行にかかった費用は本来の義務者に請求される点にも注意しましょう。
特定空き家とは、空き家特措法により自治体が指定した管理のされていない空き家です。
具体的には、以下のような空き家が指定されます。
空き家を適切に管理せずに放置していると、不法投棄や犯罪の温床になるなど周辺環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。
また、老朽化した空き家は倒壊して近隣に被害を出す恐れもあるでしょう。
このように、著しく悪影響を及ぼす恐れがあり放置が適切ではないと判断された空き家が、特定空き家に指定されるのです。
なお、2023年の空き家特措法の改正により、自治体は「管理不全空き家」の指定も可能になりました。
管理不全空き家とは、このまま放置すれば特定空き家になる、いわば特定空き家の前段階の空き家です。
管理不全空き家・特定空き家に指定されると、行政代執行のリスクが高まるだけでなく固定資産税の優遇を受けられない、行政から指導・命令されるなどリスクも高まります。
そのため、空き家を所有している場合は適切に管理することが大切です。
国土交通省によると令和4年度に行政代執行が行われた件数は39件です。
多くはありませんが、ゼロではないため、空き家を放置していると行政代執行される可能性は十分あります。
行政代執行で強制解体された場合、以下のようなリスクがある点に注意が必要です。
行政代執行は、行政が費用をすべて負担してくれるわけではありません。
行政は一度業者に支払ってくれますが、その後義務者に費用が請求されます。
また、行政代執行で解体する場合、業者の選別や手続きなどは行政側が行い義務者の意志は反映されません。
自分で解体する場合、見積もりを見比べるなど少しでも費用を抑えるようにしますが、そのような配慮はないでしょう。
一般的な解体では費用が100万円を超えるケースも少なくありませんが、行政代執行ではそれ以上の費用が請求される恐れが高くなります。
なかには、1000万円近い費用が請求された事例もあるので、注意が必要です。
費用で解体を躊躇している場合、行政代執行されるよりも自分で解体業者を探すなどした方が費用は大きく抑えられます。
いつか解体しようと放置せずに、早めに動くことをおすすめします。
行政代執行で請求された費用が支払えないとなると、最終的には財産を差し押さえられる可能性があります。
後ほど紹介しますが、国土交通省によると実際に費用が支払えずに差し押さえにまで発展したケースもあります。
差し押さえでは、現預金や不動産・株式・給与などの財産対象となるため生活に大きな支障が出る恐れがあるでしょう。
また、行政代執行で請求された費用は、税金などと同じ扱いになるため自己破産しても返済義務は免除されません。
借金が返済できないケースで自己破産すれば、借金の返済が免除されるため借金をそれ以上支払う必要はなくなります。
一方、税金の滞納分は自己破産しても免除されない強制徴収が認められています。
そのため、高額な費用が請求されると長期間支払いが続き生活を圧迫する恐れがあります。
空き家を管理していなかったから急に行政代執行される、というわけではありません。
強制代執行までにはいくつかのステップがあり、最終的に行政代執行となるので流れを押さえておくことが大切です。
ここでは、行政代執行までの具体的な流れを解説します。
大まかな流れは以下の通りです。
空き家を放置し著しく状況が悪いと判断されると、自治体から特定空き家に指定されます。
ただ、一度指定されるとずっと特定空き家のままではということはありません。
行政の指導に従って状況を改善することで特定空き家の指定は解除されるため、速やかに指示に従うようにしましょう。
特定空き家に指定されても状況の改善を行わない場合、自治体は所有者に対して状況の改善を助言・指導できます。
ただし、指導できる空き家は以下のいずれかの場合です。
また、内容としては、空き家の解体や修繕・樹木の伐採などが挙げられます。
助言・指導でも状況が改善されない場合、より強めの意味合いとなる勧告が行われます。
勧告時点ではまだ法的拘束力はありません。
しかし、勧告された時点で固定資産税の優遇措置が適用できなくなる点には注意しましょう。
土地の固定資産税は、居住用の建物が建っていると最大6分の1に軽減される優遇措置が適用されます。
この措置を適用できなくなるため、最大6倍に固定資産税が跳ね上がる恐れがあります。
勧告にも従わない場合、勧告で指示した措置を行うように命令が下ります。
命令は法的拘束力を有し、従わない場合50万円以下の過料が科せられる恐れがあります。
命令時には執行猶予が設けられるため、その期間内に内容に従うようにしましょう。
命令に対し以下のような状況である場合、自治体は行政代執行の手続きに入ります。
行政代執行前には文章で、代執行が行われる旨のその履行期限の通知(戒告)が行われます。
これはいわば最後通知です。
期限までに履行すればまだ行政代執行を免れる可能性があるので、速やかに行動するようにしましょう。
戒告の期限までに履行ができない場合、行政代執行の通知である「代執行令書」が送られてきます。
代執行令書には以下のような内容が記載されています。
ただし、非常時や危険切迫時など緊急性が高い場合、戒告と代執行令書を省くことが可能です。
戒告がないケースもあるため、命令の時点までで状況を改善しておくことが大切です。
代執行令書の期日に従って解体・撤去が実施されます。
解体業者などは自治体が選定するため、自分で業者選びや費用の比較ができない点には注意しましょう。
行政代執行後、執行にかかった費用の全額が義務者に請求されます。
代執行後に、納付命令書が送付されるので内容に従って納付するようにしましょう。
期限内に支払わない場合、最悪差し押さえにあう可能性があります。
一括での支払いが難しいでも、無視するのではなく自治体にまずは相談するようにしましょう。
自治体によっては期限の延長や分割払いに対応してくれる可能性があります。
とはいえ、強制代執行されると支払いがなくなることはないため、支払わずに済むように早めに対応しておくことが大切です。
国土交通省による行政代執行の実施状況は以下の通りです。
2018年度 (平成30) | 2019年度 (令和元) | 2020年度 (令和2) | 2021年度 (令和3) | 2022年度 (令和4) | |
---|---|---|---|---|---|
行政代執行 | 18 | 28 | 24 | 47 | 39 |
ここでは、実際にあった行政代執行の事例をいくつか紹介します。
項目 | 詳細 |
---|---|
建築年 | 昭和46年9月 |
構造・面積 | 鉄骨造3階建/敷地面積23㎡/延床面積約38.5㎡ |
状態 | 老朽化による建物倒壊のおそれ |
除去費用 | 約1,040万円 |
費用回収方法 | 差押・公売により一部回収 |
法人事業者が平成15年に移転後、管理不全が継続していた物件です。
平成23年から十数回の指導などを行っても経済的な事情を理由に状況が改善されなかったため、平成29年に行政代執行となりました。
項目 | 詳細 |
---|---|
建築年 | 昭和43年12月30日 |
構造・面積 | 木造2階建/登記面積約135㎡ |
状態 | 積雪による建物倒壊のおそれ |
除去費用 | 約270万円 |
費用回収方法 | 土地の差押・公売手続き中 |
冬季の積雪・落雪による倒壊の危険性が高いことから雪下ろしなどの管理を指導してきましたが、状況が改善されないことで平成27年には屋根の一部の崩落が発生しました。
さらに放置すると倒壊の危険性が高いことから平成29年に行政代執行が行われました。
なお、このケースでは所有者が平成27年に死亡しており、その後建物の抵当権者により申し立てられた相続財産管理人が義務者として執行されています。
ここでは、行政代執行に関連する解体費用について詳しく見ていきましょう。
行政代執行で行われる解体費用は、基本的に全額義務者が負担します。
一般的な改定費用には、以下のような項目が含まれます。
解体作業を行う人件費や車両費などの解体作業費は、解体が難しい構造になるほど高くなる傾向があります。
一般的には木造が安く、次いで鉄筋造り、RC造りと高くなります。
解体作業で出た木片やコンクリートがらなどは産業廃棄物として適切に処理する必要があるため、処理費用がかかります。
空き家の中に残置物があると、残置物処理費用が上乗せされる恐れがある点にも注意しましょう。
解体作業にかかる調査や書類作成など事務手続きに必要な費用も含まれるのが一般的です。
行政代執行の場合、上記の解体費用に加え、業者に対してかかった関連費用も負担しなければならない可能性がある点にも注意しましょう。
また、自分で解体する場合は業者選びなど費用を抑える工夫ができますが、行政代執行では安い業者を選べないため費用が相場より高くなる恐れがあります。
行政代執行で解体工事が行われた場合、業者への支払いは一時的に行政が立て替えます。
その後、行政から義務者に対して支払いの請求が行われる流れです。
支払いまでの大まかな流れは以下のようになります。
請求書には支払い期限が記載されているので、期限までに支払いが必要です。
支払わない場合は、督促や差し押さえなどの手段で回収が図られます。
空き家を所有しないために相続放棄するケースもあるでしょう。
相続放棄すれば、空き家の管理義務はなくなるため行政代執行で費用を請求されることもありません。
ただし、相続放棄していても保存義務が残っている場合は、請求される恐れがあるため注意が必要です。
保存義務とは相続財産を適切に管理・保護する義務のことです。
例えば、適切に保管していなかったことが原因で、建物が倒壊するなどして近隣の人に被害を与えたといったケースでは、損害賠償責任を追わなければならないケースもあります。
空き家の所有権のある人が相続放棄した場合でも、その人が相続放棄時に家を占有している場合は保存義務があります。
保存義務がある状況で行政代執行されると、費用が請求される可能性があります。
保存義務がある人で管理を手放したい場合、次の相続人あるいは家庭裁判所で相続財産清算人を申し立てる必要があります。
なお、相続放棄時に空き家を占有していないケースでは相続放棄すれば、保存義務も発生しません。
判断が難しい場合は、弁護士などプロに相談することをおすすめします。
行政代執行されると高額な費用が請求されるなどリスクが高くなるため、請求されないように適切に対処することが大切です。
ここでは、空き家を所有した場合での行政代執行を避ける方法を紹介します。
空き家を活用する予定がない・管理の手間や時間を割けないという場合は、解体することで特定空き家に指定されるリスクがなくなります。
遠方の実家など頻繁に訪れるのが難しい空き家なら解体してしまったほうが、管理の手間も楽になるでしょう。
ただし、居住用の建物を解体すると固定資産税が最大6倍跳ね上がる点には注意が必要です。
解体後何もせずに長期間保有していてもコストばかりかかるので、活用の予定がなければ売却を検討するのもよいでしょう。
倒壊や損壊で近隣に被害が出るリスクが高まると行政代執行の可能性も高まります。
老朽化した部分や損壊のおそれがある部分は、適切に修繕しておくことが大切です。
特定空き家に指定された場合でも、改善箇所を指導されるので指導内容に従って適切に処置しておくようにしましょう。
解体するにも高額な費用がかかります。
自治体によっては解体費用に対して補助金や助成金が設けられているので、活用するとよいでしょう。
老朽化している空き家の解体であれば補助金が適用できる自治体も多いため、自治体のホームページや窓口での確認をおすすめします。
なお、基本的に補助金や助成金は着工前の申請が必要です。
着工後では適用されないケースも多いので、事前に申請手順までしっかり確認しましょう。
特定空き家に指定されても、遠方や経済的な理由ですぐに改善できないケースもあるでしょう。
とはいえ、そのまま放置するのは行政代執行のリスクが高まるのでNGです。
すぐに改善が難しい場合は、修繕・撤去の計画を届け出し、改善の意志があることを示すようにしましょう。
自治体によっては、行政代執行の時期の見直しなど柔軟に対応してもらえる可能性があります。
空き家を所有すると特定空き家に指定されるリスクがあります。
指定されないためには適切に管理する必要がありますが、管理が難しい場合もあるでしょう。
そのような場合は、売却の検討をおすすめします。
活用の予定のない空き家を所有し続けても、固定資産税や管理費などのコストや手間ばかりかかるものです。
売却してしまうことで、コストや手間から解放されまとまった売却金を得られる可能性があります。
ただし、特定空き家になる恐れのある空き家は通常の仲介での売却が難しいケースも少なくありません。
不動産会社によっては、資産価値の低い家を取り扱ってくれないケースも少なくないでしょう。
築年数の古い空き家の売却を検討する場合は、専門の業者への依頼も視野に入れることが大切です。
空き家を適切に管理できず、特定空き家に指定されると行政代執行で強制的に解体され費用が請求される恐れがあります。
行政代執行での解体は費用が高額になる恐れがあり、さらに請求されると差し押さえまで発展するリスクもあるため、行政代執行を避けることが大切です。
行政代執行を避けるためには空き家の適切な管理が大切ですが、管理が難しいなら売却を検討することをおすすめします。
訳あり不動産相談所では、仲介では売却の難しい空き家も相談を受け付けています。
空き家所有のコストや手間・強制代執行のリスクを避けたい方・売却を検討している方は、お気軽にご相談ください。
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